アルツハイマー病研究会2017(専門的な内容です)

第18回アルツハイマー病研究会がありました。幅広い最先端の内容でした。中でも、認知症の正確な診断に検査はどこまで必要か、というトピックスが興味深かったです。以下の内容が、現状における大方のコンセンサスだと思います。(以下、ADアルツハイマー型認知症、DLBレビー小体型認知症、CHEIアリセプトなどのお薬)

・物忘れ、幻視、迷子、失行、パーキンソニズム、うつなどいずれの初発症状であっても、MRIやCTといった形態画像診断は推奨

・TPD(PART, SNAP)の可能性が否定できない場合、SPECTや場合によっては髄液検査。11CPIB(アミロイドPET)はADの確定診断には有効であるが、保険適応外。

・ADに、DLBやPSPなどの複合病理の可能性がある場合、シンチグラフィー。特に、MIBG+DATは感度・特異度ともに90%以上。

具合が悪くなってから一度も形態画像検査をされていない場合、絶対に落としてはいけない二次性認知症の鑑別のためにMRIはとても有効です。慢性硬膜下血腫や脳腫瘍、脳梗塞があるのに、CHEIが処方され、当院に精査にこられる患者さんもいらっしゃいます。問診や神経診察だけではいろいろな意見がでる場合でも、画像一発でだれもが納得する所見が得られます。両側の明らかな海馬萎縮があれば、積極的にADを支持する所見となります。ただ、MRIと一言で言っても、どのシーケンスをどこまで細かくとるかが重要になります。前頭葉や頭頂葉(特に内側面)などのdefault mode networkの器質性病変は、明らかな神経学的局所所見がとれないことも多く、漠然とした注意力の変動や、失読のみの場合もあります。しかし、患者さんをよく知るご家族は、何かいつもと違うということに気づき、受診につなげます。長く脳神経診療や研究をしていて思うのは、「脳は、脳以外の身体の異常感知には優れるが、脳自身の異常に対する警告は下手(特にnon eloquent)」です。くも膜下出血・髄膜炎・片頭痛などは、軟膜外の三叉神経領域ですので、これらも脳以外となります。たまに、「おい脳よ、なぜここまで我慢した」といいたくなるような症例もいます。

TPDに、CHEIが有効かどうかはよくわかりませんが、今までADと診断されていた中の20%程度は、TPDなどのnon ADというデータが増えてきています。MCIとの診断で生活指導中心とし、本人・家族の相談のうえ、追加検査の検討や、CHEI処方が実情ではないでしょうか。ただ、AD以外でもCHEIの有効性は示されつつあり、DLBへの処方も保険適応となりました。正確な診断には、やはり半年スパンの時間軸が必要となるのではないかと考えます。

複合病理とは、複数の認知症がかぶっている場合です。ADとして診療している方にパーキンソニズムや幻視が出現する場合、AD+DLBとなります。AD+VaDは多く、ほかにも+PSP, CBDなどいろいろ可能性があります。その鑑別に、MIBG/DATが有効です。70才未満の若めの場合は、髄液検査・遺伝子・PETなど含め、精査が必要かもしれません。

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