横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科

横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科(市大福浦)の面々と情報交換会がありました。村田講師・末永講師とその仲間たちです。新教授就任を控え、変化の大きい大変な時期と思われます。「教育」「臨床」「研究」の3本柱の維持向上を目指し奮闘しています。市大センター病院や基幹病院、同門開業医が一体となって更なる飛躍を目指したいです。

「和顔愛語」「傾聴」

書家の中澤瓈光先生から、「和顔愛語」「傾聴」をいただきました。和顔と愛語は、仏教用語で「無財の七施」のうちの2つです。社会をマイルドにする効果があります。傾聴も仏教でよく用い、「観世音」といったところでしょうか。ひと様の苦悩に耳を傾け、適切な対応を目指す姿勢です。特に、認知症ケアでは重要です。スタッフ一同暖かく患者さんを迎え、よく話を聞いていきたいと思います。

頭痛フォーラム2017

エーザイ主催、日本頭痛学会後援「頭痛フォーラム2017」がありました。トリプタンの使い分け、二次性頭痛の中でも見落とされがちのRCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)、頭痛体操のメカニズムと実践など魅力的な内容でした。

(写真1枚目)私の頭痛専門医指導者、間中信也先生(温知会間中病院院長)に、当クリニック開設後初めてご挨拶できました。「頭痛外来どんな感じ?」と訊ねられ、子供の頭痛患者さんも多いことを伝えると、「寄り添っていってあげてね」など、フォローのポイントをいくつかいただきました。

(写真2枚目)座長のお仕事直前にも関わらず、いろいろお話させていただいたき、ご迷惑おかけしました。常に柔和な姿勢で、人間力も勉強になります。

(写真3枚目)埼玉医大の理学療法士さん主導で、全国の頭痛に携わる医療者みんなで、「正しい」頭痛体操を実践しました。2分は以外に長く、しっかりやると頸肩がかなり軽くなると改めて実感しました。

車の運転と認知症

神奈川県医師会で、「認知症にかかわる診断書提出命令制度」に関する会がありました。今年の3月12日から施行される改正道路交通法についてです。

車の運転と認知症には、様々な問題があります。脳卒中や高齢発症てんかん同様、認知症も交通事故の大きな原因です。高速道路や一方通行を逆走したり、歩道の人をひいてしまったり、歩道につっこんでしまう。ニュースでもよくみかけます。2025年に向け、人口当たりのこれらの有病率も高まるため、法整備をすることは大切と思います。一方、人生終盤にかけて仕事や仲間など失うものが多い時期であり、車が好きだった方にとっては大きな喪失体験となることにも配慮する必要があります。古来より、人間は老いるとともに人格が高まっていくイメージですが、年々長寿記録が塗り替えられる昨今、医学生理学的にも精神機能や高次機能を維持する伝達物質は減少するのでそうとも言えなくなっています。突然の大切なものの喪失や、連続する喪失体験は、精神疾患の原因となったり、かっとして事件を引き起こしてしまうリスクがあります。嗜好の転換や、徐々に車の運転から離れるように、早めから時間をかけて調整する必要があります。

認知症の種類は様々あり、こういったケアの方法も疾患ごとに異なります。そういった視点からも、早期の正確な診断が必要です。

レビー小体やアルツハイマーのように視空間認知にかかわる部分が脱落する場合は、車庫入れがうまくできなくなったり、すったりするでしょう。血管性認知症などの皮質下性認知症の場合は、注意散漫になり、周囲の変化に反応する時間が遅くなることから事故につながるでしょう。ご家族が気づいてあげることも大事です。特に、短期記憶障害(同じことを繰り返し質問する)が初期に出にくいレビー小体型認知症には注意が必要と考えます。

実際認知症の治療にあたっていて、「運転をやめさせたいけど怒ってしまうので、、」というご家族や、アリセプトやメマリーなど内服している患者さんが陰で運転してしまうなど、問題はさまざまです。抗認知症薬を内服している場合は運転してはいけないのですが、管理はとても難しいのが現状です。

脳(こころ)の漢方

頭痛やめまい、認知症の周辺症状の治療において、漢方は重要な役割を担っています。新横浜のかえるメンタルクリニック院長、陶山亨先生のこころの漢方講演がありました。個人的には、陶山先生はスーパーベーシストとしての印象が強く、横浜市大学生時代に一緒にライブをしたりしました。久しぶりにお会いし、講演を聞いて、精神領域における漢方治療のエキスパートとしても改めて感銘をうけました。頭痛やめまいなどの身体的不定愁訴は、背景に不安・不眠・焦燥・抑うつなどの精神症状を伴っていることが多く認められます。特に頭痛の有病率の高い女性においては、背景に生理周期による変動や更年期障害の影響もあります。このような多彩な不定愁訴に対しては、向精神薬よりも漢方が著効するケースが多くあります。陶山先生の話を伺い、効果的な処方の背景には、じっくり患者さんの話を聞き、何が起こっているかを見極め、十人十色のテーラーメイド処方があると感じました。改めて、「傾聴」を実践しなくてはと思いました。

神経原線維変化型老年期認知症(ちょっと難しい内容です)

ブレインバンクの河上緒先生の、神経原線維変化型老年期認知症の神経病理に関する講演と、平塚地区精神科の先生方とのディスカッションがありました。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβの蓄積(老人斑)と過剰リン酸化タウ凝集による神経脱落(神経原線維変化)が病因とされています。海馬傍回の嗅内皮質から始まり、大脳新皮質に年の単位で進行し、新皮質の機能を次々と傷害し、発症から10年程度で死亡します(図 Braak et al, 1995)。しかし、類似の病理像を呈する疾患がいくつかあります。そのうちのひとつが、高齢者タウオパチーのひとつ、神経原線維変化型老年期認知症です。これは、アルツハイマーと似たような、短期記憶障害と怒りっぽいなどの性格変化で始まります。妄想も多く認められることが特徴です。MRIでも、海馬傍回から海馬の萎縮を呈することからVSRADに異常がでるため、アルツハイマー型認知症と誤診されているケースが多いように思います。ブレインバンクの剖検例をみても、生前にアルツハイマー型認知症などほかの疾患と診断されていて、死後病理で神経原線維変化型認知症であったというケースも多いようです。

問題は、VSRADとamnestic MCIのみでアルツハイマー型認知症と診断し、安易にアリセプトなどのコリンエステラーゼ阻害薬を使用することで、易怒性などの陽性症状が悪くなる可能性があることです。80歳以上の高齢者で、緩徐進行性の短期記憶障害の場合、生活機能障害がなければ(FAST3)、易怒性などの情緒障害をターゲットとした気分安定薬や抗精神病薬などで進行するかどうか経過をみていくことが重要であると思われました。基幹病院で脳血流SPECTを行い、頭頂葉や楔前部血流低下を確認することも必要と思われます。

迂回回から左右差をもって萎縮する嗜銀顆粒性認知症も、似た問題を抱えており、VSRADだけでなく、海馬冠状断で、どこがどのくらい萎縮しているのかをよく見て、アルツハイマー型認知症でない可能性があると常に疑いながら注意深く処方することが大切であると考えます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25348064

歩いて来るくも膜下出血

くも膜下出血というと、命に関わる救急疾患というイメージがあると思います。確かに多くは「経験したことのない頭痛」「バットで殴られたような頭痛」で、救急搬送されます。しかし中には、軽い頭痛やめまいだけの場合もあります。
「朝から頭痛はあったけど仕事休めないから」といって夕方に来院されたバスの運転手さんや、「1週間前に家の掃除をしていたら頭痛がした。痛み止めで様子を見てよくなったけど念のため。」と、1週間後に来た主婦などで、くも膜下出血の診断をした例があります。この仕事をしているとときどき遭遇します。写真はその1例で、右側頭葉先端にわずかにくも膜下出血を認めます。
一般的に、くも膜下出血になると、1/3は死亡・1/3は後遺障害・1/3は元の生活に戻る、といわれます。ただし、2回目の出血(再出血)をおこしてしまうと、7割の方が亡くなります。
家族歴がある方や、持続するいつもと違う頭痛がある場合は、動脈瘤や血管解離の有無と、くも膜下出血の痕跡のチェックをお勧めします。

東海道沿線脳外科クリニックの会

東海道沿線(正確には横須賀線・町田含む)の各駅前で開業している、横浜市立大学脳神経外科教室同門の脳神経外科クリニックの会がありました。地域における脳神経診療の均てん化・質の向上を図るべく、MRI完備の脳神経クリニック運営に関する情報交換をしました。当院は最も新しいクリニックであり、医療をとりまく諸問題につき、よい勉強になりました。JRは各駅間の距離も長く、患者さんの状況に応じて、効率的な連携ができるよう体制を整えていけたらと思います。
参加者左手前から、
小田原 小野先生
保土ヶ谷 日暮
町田 鈴木先生
藤沢 味村先生
茅ヶ崎 橋本先生
大船 高田先生
戸塚 張先生
東戸塚 中山先生

エーザイ横浜支社社内講演会

脳神経外科医として大変お世話になっております、エーザイ横浜支社の社内講演をしてきました。エーザイは、戦前に起業した日本を代表する企業です。エーザイという名前は衛生材料に由来しているそうです。
脳神経外科クリニックとしては、認知症薬のアリセプトと、片頭痛特効薬のマクサルトで、エーザイにはとてもお世話になっております。今回は、治る認知症と、レビー小体型認知症の診療の実際について、情報提供しました。日進月歩の領域であり、今後ともよいつながりをもって患者さんへ有益な医療を提供していきたいと思います。

横市の神経再生研究トピックス

私の学位指導者である、横浜市立大学生命医科学研究科の竹居光太郎教授が、神経再生研究でプレスリリースされました。
現在の医療では、脳梗塞や脳挫傷などで障害された脳は再生できず、後遺症を一生抱えることになります。障害後早期からのリハビリテーションのみが、限定的な神経ネットワークの再構築を促します。心臓や肝臓など他の臓器は、細胞移植や臓器移植などで機能回復が期待できますが、脳は神経細胞が増えても、発達で見られるような複雑なネットワーク構築は現状不可能です。
竹居教授は、私が学位研究をしている折、神経再生を阻害するNogoを抑制する分子LOTUSを発見しました(Sato Y, et al. Science. 2011)。今回、Nogoの新機能が発見されました(Iketani M, et al. Sci Rep. 2016)。神経再生医療に期待されるLOTUSは、当院のロゴの蓮LOTUSと同じ、ご縁を感じます。
神経ネットワーク構築のメカニズム解明は、神経再生という難問解決の前提です。横市発の神経再生研究に、今後も期待です。

http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/20170110_Takei.html