祝 村田英俊先生 聖マリアンナ医科大学脳神経外科 主任教授就任

横浜市立大学脳神経外科 准教授の村田英俊先生が、聖マリアンナ医科大学脳神経外科教室 主任教授に就任されました。当教室から他大学脳神経外科主任教授が誕生したのは、教室史上初でしてとても栄誉なことと思います。14人の錚々たる脳神経外科の実力者が犇めく教授戦を制するのはさぞかし大変だったと思います。異動前に壮行会が同門主催で開催されました。コロナ配慮のため飲食なしの静かな雰囲気の中、村田先生のビジョンを拝聴いたしました。

村田先生より拝受したスライドを 提示して紹介いたします。村田先生とは私が市大に入局してからのつきあいで、柔和でありながら動じず、常に余裕のある優しい頼りがいのある先輩です。上スライドに村田先生の執刀された手術件数がありますが、臨床能力はとても高く、手術件数も群を抜いています。幅広いサブスペシャリティーで求められ、安定した丁寧な手術をされます。

上スライドは、聖マリアンナ医科大学の主要施設です。聖マリアンナ医科大学脳神経外科教室と、横浜市立大学脳神経外科教室が協働することで、川崎・横浜・湘南の巨大エリア連携が可能となります。双方の医員にもよい連携ができ、臨床・研究において強力なパワーを発揮するのではないでしょうか。下図の黄色い部分が聖マリアンナ医科大学の中心エリアです。

先代の教授が他界された時期は減ったものの、横浜市立大学脳神経外科は、以前より全国でもトップクラスの入局者数を誇っています。両大学の多数の医局員×豊富な病院選択肢が提供されることになり、サブスペシャリティーの研鑽が活発化され、次世代のオピニオンリーダーが多く誕生することを願っています。

村田英俊新教授と。今後ともご指導いただきたく思います。

 

エムガルティ(ガルカネズマブ)Up to Date

日本イーライリリー株式会社主催のエムガルティ(ガルカネズマブ)エキスパートカンファレンスがありました。横浜市の脳神経外科診療における恩師である たぐち脳神経クリニック院長 田口博基先生座長にて、頭痛診療の師匠である 間中病院名誉院長 間中信也先生より、「頭痛診療のファーストステップ~片頭痛患者さんを我慢の楔から解放できるか~」と題してご講演いただきました。

エムガルティ(ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤)が本邦で発売されて来月で1年を迎えます。間中信也先生からのエムガルティ発売後の講演をいただけたのは個人的に初めてで、大変興味深い内容でした。まず、今回のポイントは、エムガルティはパラダイムシフト(常識の転換)をテーマに発売されましたが、それを転じて、片頭痛患者のパラダイスシフト(安楽への移行)のカギとなる製剤であるという点です。私も小児喘息もちでしたので、「この息苦しさがなければみんなよりサッカーもかけっこもうまくできるのに」などと悩ましい幼少期を送った記憶があります。β刺激薬吸入が開発され、そこで苦しくなった時に発作が止まる感動がありました(片頭痛でいえばトリプタン製剤に該当すると思います)。また、息苦しい時は物事に集中できずなおさら運動などでるはずもなく、仕方なしと踏ん張っておりましたが、ステロイド吸入薬が開発され、ほとんど発作がでなくなり、作業効率が高まった記憶があります(片頭痛でいえばまさに今回のエムガルティなどの抗CGRP関連製剤に該当すると思います)。

エムガルティは、使ってみないとわかりませんが、患者さんによっては、ほぼ消失~治癒したのではないかという方も20%いらっしゃいます。そこまででなくとも、発作はあるが市販薬やトリプタンで寝込まなくて済んだという方が多くいます。間中先生の「我慢の楔から解放できるか」は、頭痛があることが当たり前としてあきらめ、活動の下方修正仕方なしとしてしまっている方を解放したいという願いを感じます。そうでない場合は、緊張型頭痛や心因反応、その他の一次性頭痛、見逃されている二次性頭痛があるかどうか再検討が必要です。また従来予防薬や漢方も功を奏する患者さんも多いので、ハイブリッドで生活支障ゼロをめざすことも可能です。

(下写真:会終了時に記念撮影いたしました。田口先生のもっている「改訂2版 ねころんで読める頭痛学 診断と治療: アタマがイタい頭痛診療の悩みをドクター間中がすっきり解決!! 」間中先生の新書です)

私はディスカッション座長を担当いたしました。最近はろくに論文も書いてない一介の地域頭痛治療医にもかかわらずお声かけていただけてありがたく思います。

(ポイント1)CGRP製剤の効果が予測できるか??高価な薬だけに、CGRPの関与した頭痛(いわゆる片頭痛)かどうかを事前にわかるかどうか。緊張型頭痛~片頭痛までシームレスに多段階にCGRPが関与するというお話もあります。これからの研究課題と思います。

(ポイント2)「見えない頭痛支障の見える化」元祖定量ツールは頭痛ダイアリーです。当院では私がつかみ切れていない頭痛の患者さんには勧めています。ただし、記入や解析は労があることもあります。そこでHIT6という、受診時点での支障度評価ツールがあります。こちらは、当院では初診、抗CGRP製剤導入・フォロー時は必須としておりますが、患者さん側からみても「私の頭痛って、こんなにわるいの?」「よくなってるじゃない」などの簡易なチェッカーになっている印象があります。

(ポイント3)「しゃべる絵本」今後普及していくと思いますが、平易な言葉とシンプルな動画で片頭痛の病態とエムガルティの及ぼす効果が短時間で理解できる内容となっています。当院でも本会事前に数人にみてもらいました。今後、パンフレットに組み込む・頭痛外来HPにリンクをはるなどのシステムができるとより拡散(啓発)されることと思います。

新規の片頭痛抗体治療薬アジョビ(フレマネズマブ)とは

大塚製薬主催、保土ヶ谷区医師会協賛で、「片頭痛診療について考える会」がありました。私は久しぶりに40分の長い講演を担当させていただき、脳神経外科東横浜病院 副院長 郭彰吾先生に座長していただきました。Session2として、横浜エリアで活躍されている脳神経外科・神経内科医の先生を中心に、アジョビ(フレマネズマブ)の活用方法につき議論いただきました。アジョビは昨年本邦で発売された抗CGRP抗体治療薬です。片頭痛の発生メカニズムに関与するCGRPをキャッチして失活する薬です。私からの 講演としては、当院では約30例のアジョビを使用しており、従来発症抑制薬に加えて、あるいは入れ替えて使用し、1か月あたりの頭痛日数・トリプタンなどの薬使用回数・HIT6というQOLスケールの改善が得られています。やや高額な薬ですが、試す価値はあるかと思います。約20%の方はsuper responderといわれる、頭痛がほぼゼロになる著効例がおりますが、使用してみないとわかりません。

また、どういうときに必要かという議論においては、頭痛頻度上昇しており、休職リスクや大きなプロジェクトをかかえている、受験を控えているなどのどうにもならない状況においてはコスパはよいと思います。また、ストレスの多い休めない仕事についている方の片頭痛重積や頻度上昇時にも従来予防薬で不十分な場合に効果的かと思います。処方する側としては、保険から多くの公費を使うお薬だけに、必要十分な量を模索し、軽減しているシーズンはオフにするなどのアイデアが必要であると感じました。一方、片頭痛の患者さんには、いざというときはアジョビがあるということを念頭におき、マネジメントしていただけたらと思います。右から、子安脳神経外科クリニック院長 子安英樹先生、脳神経外科東横浜病院副院長 郭彰吾先生、左から、ポートサイドプレイス中崎クリニック院長 中崎浩道先生、碧水脳神経クリニック院長 増田励先生(頭痛学会評議員)です。頭痛を診療する各医療機関の経営者としての視点から、新しい抗体治療薬の扱い方、初回投与のタイミング・継続・中断、スポット利用、使用できる年齢や挙児希望者との絡みなど、多くの意見をいただきました。特に、高校受験生や大学受験生に関しては、安全性は18歳以上で確認済であるが、15歳から投与可能との大塚側からの回答を得たことで、該当する患者さんは大きな恩恵を得られるのではないでしょうか。ご興味のある患者さんは、是非お気軽にご相談ください。

最新の脳神経外科WEBセミナー

大塚製薬主催の最新の脳神経外科WEBセミナーがありました。今回は、演者・座長ともに、縁の深い先生方でした。横浜市立市民病院 脳血管内治療科 科長 増尾修先生から、「脳動脈瘤に対する血管内手術」を、国立病院機構 横浜医療センター 脳神経外科 主任部長 宮原宏輔先生から、「最新の脳神経外科治療」と題してご講演いただきました。私と、東戸塚脳神経外科クリニック 院長 中山敏先生と座長を務めさせていただきました。

(中山敏先生は、横須賀線お隣通しの駅前で脳神経外科クリニックをそれぞれで経営しておりますが、以前は高難度手術症例を2人で数多くこなしてきた戦友先輩です。)

増尾先生は、業界の方々は周知のとおり日本の脳血管内治療を牽引するオピニオンリーダーで、当院の近くにいてくれてとても心強いです。脳血管内治療は日進月歩の領域で、技術・Device・Evidenceが気づけば進歩しています。責任の重い立ち位置において、柔和にして融通の利く地域脳卒中のサポートをされており、いつも助けていただいております。以下のスライドのように(増尾先生提供)、脳動脈瘤の部位・形態などにより、多くの技法があります。私は開頭マイクロ手術中心でしたので、血管内のことは不勉強ではありますが、とても根気のいる作業と思います。

宮原宏輔先生は、私の医局の2個上の先輩で、国立病院 横浜医療センターという巨大な脳神経外科チームを長く支えてこられています。業界の方々は周知のとおり脳神経外科学レジェンドの藤津和彦先生と長く診療にあたられ、そのアクティビティを維持~さらに活性化して現在主任部長という要職にあたられています

国立病院横浜医療センター脳神経外科は、地域・市大同門からの信頼も厚い病院で、長期にわたり全国トップレベルの手術症例数を維持しています。脳の病気に対する治療法も多岐にわたり、開頭マイクロ手術*血管内治療*内視鏡手術*外視鏡手術とアプローチ技術の多様化も日進月歩です。それぞれで奥が深く、それぞれを習得した脳神経外科医が共同して治療にあたっていくことで、さらに安定安心の治療となります。以下2枚のスライド(宮原先生提供)は、私個人もいまだに燃えてしまう高難度症例の数々です。主として頭蓋底髄膜腫や聴神経腫瘍は初期症状は軽微なことも多く、眼科や耳鼻科などから紹介されるケースも多いです。宮原先生のような心技体の整った棟梁が、各サブスペシャリティーの脳神経外科医を統括して巨大病院の脳神経外科を牽引していくことがとても大切と感じますし、後輩の教育・育成も大きな課題だと考えます。

最近話題になっている片頭痛予防注射薬

今年4月に本邦で発売された、エムガルティ(ガルカネズマブ)の勉強会がありました。頭痛診療ではご高名な、聖マリアンナ医科大学病院内科学(脳神経内科)教授 秋山久尚先生にご講演いただき、恩師のたぐち脳神経外科クリニック院長 田口博基先生と座長をさせていただきました。ご意見番として、にわメディカルクリニック院長 丹羽義和先生にも参加いただきました。

最近発売された3つのCGRP関連の注射薬は、当院では現在35例の方が治療を受けられております(うちエムガルティ27例)。片頭痛の痛みのメカニズムで血管拡張と痛みを引き起こすCGRPという物質に対する抗体治療薬です。
秋山先生の自検例では、エムガルティを受けられた患者さんの治療満足度は90%におよび、 4か月後も満足度85%とのことでした。診断と適応を正確にすれば恩恵は大きいと思います。
当院の症例でも、注射後1週間で頭痛が大幅に低減した著効例~数か月繰り返し投与することで効果の上乗せ効果を認める症例もいます。1回のみ注射をうって数か月様子見ているかたもいますが、その方は従来薬でも十分楽になり、効果が長く続く症例もあると感じました。当院では1例、効果が実感できず、アイモビーグに切り替えた症例があります。
秋山先生も述べられた治療満足度は、頭痛自体の消失以外に、頭痛で仕事を休むことがなくなった・ トリプタン製剤やNSAIDSの効果が高まった等、様々な形でQOL改善がえられたことにあります。また、感覚過敏・吐き気・集中困難など、片頭痛に随伴する違和感も低減する効果が認識されつつあり、別会で間中信也先生が、brain fogが晴れてcrystal clearになるといわれておりました。

気になる副作用は、注射部位の痛みが主で大きな有害事象は今のところありません。17歳以下の学生・受験生や、挙児希望・不妊治療中・ 妊婦にも安全にも使えるように適応幅が広がるとよいなと感じます(今のところ制限付きです)。
治療効果判定には、頭痛ダイアリーのほか、定期のHITやMIDASは有効で、当院でも積極的に導入する必要がありそうです。CGRP注射薬に限らず従来予防薬でも、片頭痛治療はひとたび軌道に乗ってしまえば、各自使いやすい主要評価項目での治療効果判定でもよいと思いますし、様々な頭痛モニタリングアプリを活用している患者さんもいます。患者さん側から教えていただく情報もたくさんあります。
さらに気になる辞め時に関しても議論がありました。まだ発売間もないので確固たる意見はありませんが、小生の意見としては、1か月周期から伸ばしていく、例年頻度の多い時期にスポットで使う 、辛いことがあって薬物乱用モードに入った時にスポットで使うなどもあると思います。また、純粋な片頭痛ではなく、心因反応の影響が強い患者さんには、従来薬のトリプタノールやデパケンの併用も選択肢になります。

頭痛の知識を深める会

ツムラ主催の「頭痛の知識を深める会」がありました。いつも診療や経営でお世話になっている、横浜市立大学脳神経外科 主任教授 山本哲哉教授と、子安脳神経外科クリニック院長 子安英樹先生に運営していただき、日本の漢方治療x頭痛外来x脳神経外科の大家である、らいむらクリニック院長 來村昌紀先生を特別演者としてお迎えし、頭痛に対する漢方治療の講演をいただきました。小生は、地域の一頭痛外来として、当院での頭痛外来のコンセプトや重視している5ステップについてお話させていただきました。

來村先生からは、頭痛診療でガイドラインで推奨されている五大漢方(五苓散 呉茱萸湯 釣藤散 桂枝人参湯 葛根湯)に加え、川芎茶調散 当帰芍薬散 桂枝茯苓丸 六君子湯につき、選択のコツなどについてご指導いただきました。患者の年齢・性別、症候にくわえ、「証」「血気水」を考慮して選択していく必要があります。らいむらクリニックHPから、來村先生お話をYOUTUBEで拝見できるので、勉強できます。薬物乱用頭痛の解除に漢方も一法であることや、妊娠希望女性に安全に使える予防薬として漢方は選択肢になることも有益な情報でした。

私の方から、当院の頭痛外来で重視している5STEPも提示させていただきました。当院フォロー中の患者さんや関心がある患者さんの参考になればと思い、この場を借りてスライド1枚だけ提示いたします。

エムガルティ~片頭痛治療のパラダイムシフト

新規発売された片頭痛予防注射薬エムガルティの勉強会がありました。平素よりお世話になっている横浜市立市民病院神経内科部長 山口滋紀先生座長のもと、日本の頭痛診療を牽引する第一人者 静岡赤十字病院脳神経内科部長 今井昇先生より、「片頭痛発作抑制のパラダイムシフト~片頭痛と頭痛医療連携」と題してご講演をいただきました。若輩ながらオープニングリマークスを担当させていただきました。
エムガルティへの期待について:::片頭痛発生メカニズムに焦点を当てた予防薬は世界で初です。やや値が張りますが、頻度の多い反復性片頭痛や慢性片頭痛の患者さんで、従来の各種予防薬による抑制に限界がある方に適応があります。当院でも投稿現時点で12人の方に投与しており、5人のフィードバックを得ていますが、月15日以上頭痛に悩まされている患者さんでトリプタンの使用が月0になった方もおり、とても優れた治療薬である実感があります。ご自身に適応があるか、どのような期間で使うのかなど、ご興味がある場合は、是非ご相談ください。

頭痛診療の医療連携について:::片頭痛患者は、全国で1000万人といわれており、頭痛専門医による頭痛外来のみでは当然対応しきれません。今井先生は、静岡全域において頭痛医療連携の構築に取り組んでおられ、患者と医療者双方にwinwinのシステムの構築に尽力されており、ご努力に感銘を受けました。頭痛専門医の役割としては、以下の診断が最低限必要です・・片頭痛であること 頻度重症度の程度の判定 予防薬と屯用薬の必要十分な判定 睡眠やストレス管理などの生活指導・・エムガルティなどの適応の判断。これらの判定には、見えない頭痛の見える化ツールである頭痛ダイアリーが必要です。患者さんがある程度頭痛対処の技を習得した後は、頭痛を真摯にみる「かかりつけ医」を紹介し、継続的にサポートしていただき、再び対応困難な局面に直面した際に、頭痛専門医で補正していく連携が必要となります。

これからの頭痛診療の在り方を深く考えさせられる会でした。

近況報告ー代診 エムガルティ GE製最新機種頸部エコー導入ー

4月から新年度を迎え、当院の代診の先生方も一部変わりました。横浜市立大学脳神経外科 山本哲哉教授外来は需要も多く、6月より月2回金曜日の午後診療を快諾いただきました。とても熱心に診療にあたっていただいており、私自身の診療も身が引き締まる思いです。

木曜日の午後は、三宅茂太先生が医学博士をとって横浜市立脳卒中神経脊椎センターに異動になりましたため、市大本院脳神経外科 次世代臨床研究センターより、高瀬創先生が月2回代診をしていただけることになりました。高瀬先生は、脊椎脊髄外科専門医 スポーツドクターでもあり、しびれ外来や運動時外傷を中心に当院の診療を強化してくれています。

火曜日の午後は、川崎貴史先生が市大救命から藤沢湘南台病院に異動となり、大学本院脳神経外科大学院の大島聡人先生が月2回代診をしていただけることになりました。大島先生は脳腫瘍の専門性が高く、また英語が堪能ですので、英語による複雑なインフォームドコンセントなどをお願いいたします。

水曜日は、引き続き、市大本院の佐藤先生のしびれ外来、市大センター病院の東島先生のてんかん・ふるえ外来をお願いしています。

どの先生も、丁寧に診療してくれる方ばかりなので、いつでもお気軽にご相談ください。ありがたいことに日暮の外来も含め、とても多くの方々にご利用いただいておりまして、しばしば混雑し、ご迷惑をおかけいたしております。なんとか高い集中力をもって肝を見抜いていきたいと思います。予約制に関しては、医師の指示による検査予約や脳ドックをのぞいて、導入しておりません。予約制は、高齢者やネットが苦手な患者さんの不利益にもなる可能性があり、いまのところ公平性重視で対応していることにご理解いただけますと幸いです。

エムガルティについて: 新規に発売された片頭痛発作予防薬です。月1回クリニックで注射することにより(初回2本)、月の頭痛がおおよそ半減するイメージです。いまのところ当院の頭痛外来では、頭痛ダイアリーで発作状況を確認して、従来の内服予防薬でおおよそ8-9割の方で発作がほぼ消失~半減、あるいは1回の発作重症度の低減がえられています。そのなかでも改善が弱い場合、毎日内服することに抵抗がある などの場合、エムガルティは選択肢になりえると考えます。但し薬価が高く、保険適応ですが、1本45000円の保険自己負担分は13500円です。額に見合った効果が得られるかどうか、慎重にフォローしていく必要があります。関心がある場合は、日暮の外来で相談してください。

GE社製超音波装置: 脳卒中の診療にはとても大事な頸部エコー検査。GE製の最新機種を導入しました。当院は、脳卒中治療に特化した多くの病院と連携しております。頸部エコーは、動脈硬化や脳ドック的な検査のほか、頸動脈狭窄の手術適応の判断 ステント留置後のフォローアップには欠かせません。

コロナワクチン接種可能かの問い合わせ: 外来や電話で、非常にたくさんの問い合わせをいただいております。今のところエビデンスはないので、現在当院で処方している薬は継続して接種してください。接種当日は、医師会の持ち回りで主に開業医が接種前問診をしますので(私も当番があります)、その際に直近の状況をうかがってみてください。

 

頭痛学 総復習

先日、第76回横浜内科学会神経研究会が開催されました。緊急事態宣言下で、WEB配信Teamsで行いました。今回は私が当番幹事をさせていただきましたので、頭痛診療の師匠である、間中信也先生に私の勉強も含めて講演をお願いしました。

日々頭痛外来をしておりますと、「頭痛」という症状で受診はしますが、幅広い原因があり、適切な診断をしなければ、治療もうまくいきません。今回、間中先生には、上記タイトルで、頭痛診療に従事している横浜・神奈川の先生方向けに講演いただきました。以下、いくつか紹介します。

●頭痛診療で見逃してはならないred flagとして、くも膜下出血に注意(Walk-in SAH 歩いてくるくも膜下出血)。他にも、怖い二次性頭痛があります。共通の特徴として、突然、初めて、改善しない、などがあり、注意が必要です。

●一次性頭痛は片頭痛・緊張型頭痛・三叉神経自律神経性頭痛(TACS 群発頭痛など)の3つが有名ですが、国際分類には、第4群としてのその他の一次性頭痛が10項目あります(下スライド 間中信也先生提供)。それぞれに、治療法や対策が変わります。

●片頭痛もちの方の脳の特徴として、「過敏性」Migrainous brain(片頭痛脳)があり、以下の特徴があります(下スライド 間中信也先生提供)。片頭痛の発生メカニズムにおけるCGRPという物質。近いうちに抗CGRPモノクローナル抗体治療薬が登場する予定です。現在の予防薬に強い味方が加わります。

●三叉神経痛 帯状疱疹後神経痛 などの神経痛には、神経障害性疼痛治療薬(タリージェなど)が有効な場合があります。

●可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の特徴にも言及されました。突然の頭痛もちとなり、入浴・労作・感情変化によりスイッチの入る雷鳴頭痛を繰り返します。最初の1か月は頭痛期 次の1か月は血管攣縮期(出血や梗塞になることがある)おおむね2-3か月で自然に改善しますが、脳動脈瘤破裂などによる卒中red flagsは常に念頭に置く必要があります。

●新型コロナウイルス(SARS CoV 2)に関わる頭痛に関し、以下のスライドを提示されました。

●薬物乱用頭痛(MOH)への配慮と、その治療法。頭痛タイプ分類の正確な診断および治療効果判定のために頭痛ダイアリーは必須です。また、頭痛ダイアリーは、患者さん自身が自分の症状特徴に気付いたり、認知行動療法的効果の期待もあります。

 

 

2021ごあいさつ

あけましておめでとうございます。昨年は当院をご利用いただきありがとうございました。新年は、コロナ情勢が不透明なスタートとなりました。患者さんにできることを丁寧に拾って、少しでもプラス転換できるきっかけを作っていければと思います。引き続き「与楽抜苦」に徹してまいります。

コロナ対策として、当院で継続診療している患者さんは、再診でお変わりなしの場合は受付で諸事確認後に処方箋をお渡しします。また、初診や変化があってMRI検査が必要と判断される場合、検査までの待機時間は、おおよその戻り時間をお伝えして外出も可能としています。検査のない再診の場合でも、受付エントリー後に同様の対応をしています。診療所内の密を避けることを目的としておりますが、待合室内や共用部廊下での待機も問題ありません。なるべく会話は避け、少人数でお願いします。

昨年末に頭痛学会主催のオンライン勉強会がありました。頭痛に関連する最近の情報がアップデートできましたのでいくつか紹介します。

新型コロナCOVID19による頭痛:COVID19は、発熱と咳に加え嗅覚味覚障害が特徴ですが、急激に発症して持続性になるいつもより重めの頭痛も併発する可能性が報告されています。髄膜炎や脳炎に至った症例も報告されています。従来の全身性感染症による頭痛(ICHD3 9.1)と異なる特徴があるかは、まだ不明確と思います。ちなみにイブプロフェンによるCOVID19症状増悪の科学的根拠は今のところありません。

マスク頭痛:マスク着用により呼気中の二酸化炭素を吸い込むため、血液中の二酸化炭素が増えます。高炭酸ガス血症による頭痛(ICHD 10.1)は頭全体の鈍い頭痛です。加えて当院外来での印象ですが、マスクの耳に掛ける紐や頭部顔面の圧迫で頭痛が増えている方がいます(頭蓋外からの圧迫による頭痛ICHD3 4.6.1)。マスク着用に工夫が必要です。

片頭痛の新しい治療の可能性:近いうちに抗CGRPモノクローナル抗体の自己注射による新たな片頭痛治療が期待されています。