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車の運転と認知症

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神奈川県医師会で、「認知症にかかわる診断書提出命令制度」に関する会がありました。今年の3月12日から施行される改正道路交通法についてです。

車の運転と認知症には、様々な問題があります。脳卒中や高齢発症てんかん同様、認知症も交通事故の大きな原因です。高速道路や一方通行を逆走したり、歩道の人をひいてしまったり、歩道につっこんでしまう。ニュースでもよくみかけます。2025年に向け、人口当たりのこれらの有病率も高まるため、法整備をすることは大切と思います。一方、人生終盤にかけて仕事や仲間など失うものが多い時期であり、車が好きだった方にとっては大きな喪失体験となることにも配慮する必要があります。古来より、人間は老いるとともに人格が高まっていくイメージですが、年々長寿記録が塗り替えられる昨今、医学生理学的にも精神機能や高次機能を維持する伝達物質は減少するのでそうとも言えなくなっています。突然の大切なものの喪失や、連続する喪失体験は、精神疾患の原因となったり、かっとして事件を引き起こしてしまうリスクがあります。嗜好の転換や、徐々に車の運転から離れるように、早めから時間をかけて調整する必要があります。

認知症の種類は様々あり、こういったケアの方法も疾患ごとに異なります。そういった視点からも、早期の正確な診断が必要です。

レビー小体やアルツハイマーのように視空間認知にかかわる部分が脱落する場合は、車庫入れがうまくできなくなったり、すったりするでしょう。血管性認知症などの皮質下性認知症の場合は、注意散漫になり、周囲の変化に反応する時間が遅くなることから事故につながるでしょう。ご家族が気づいてあげることも大事です。特に、短期記憶障害(同じことを繰り返し質問する)が初期に出にくいレビー小体型認知症には注意が必要と考えます。

実際認知症の治療にあたっていて、「運転をやめさせたいけど怒ってしまうので、、」というご家族や、アリセプトやメマリーなど内服している患者さんが陰で運転してしまうなど、問題はさまざまです。抗認知症薬を内服している場合は運転してはいけないのですが、管理はとても難しいのが現状です。