相鉄沿線の3人で認知症を語る会/アリドネ
興和株式会社主催 神奈川エリアのKowa Web Conferanceがありました。アリドネパッチという貼付剤が上市され半年がたちました。ドネペジルの貼付剤です。今回は、アリドネパッチについての有用性および、当院での使用経験を最初にお話しいたしました(かかりつけ医向け)。相鉄沿線にクリニックおよび病院をもつ3人で議論しました。精神科・脳神経内科・脳神経外科と3科に分かれてそれぞれの意見交換ができたことは貴重でした。座長は、オーストラリア留学が現地で一緒だった誠心会理事長 佐伯隆史先生座長でした。ディスカッションは、諸会でお世話になっているせやクリニック副院長 川口千佳子先生でした。
要点を以下にお示しします
保土ケ谷区に限らず、横浜市全体では2025年 2040年と、高齢者割合が増加し、要介護認定者増加がさらに加速することが見込まれる。これによる社会保障費の支出増大、補填する徴収が増えます。100年時代にむけ、長く健康であることの意識と対策が重要である。
認知症は、脳腫瘍や水頭症などの脳外科疾患や、内科的血液の異常や、神経内科疾患に付随するものなどたくさんの原因があります。中でも多いのはアルツハイマー型認知症です。自分はどの病態なのかをまずはっきりさせてから、重症度より治療方法をきめていきます。アルツハイマー型認知症になりにくくなる方法は以下のスライドのように各年代にあります。参考にして、生活を組み立てていくことが重要です。
投薬治療は推奨されます。従来からよく使われていたドネペジル(アリセプト)の貼付剤が発売され、当院では積極的に導入しておいります。根拠は、下スライドのように、内服にくらべて(点線)血中濃度が安定するため、副作用や、その日の胃腸や肝臓の影響を受けにくいところにあります。継続率は高いですが、薬管理が自分でできなく病気でもあり、家族や服薬サポーターの導入を検討して、安定的に治療することが重要です。また、介護保険はじめ、認知症カフェや趣味のサークルのようなものはとても大切で、麻雀ずきだったご老人が麻雀カフェにいったとたんにみるみる元気になるなど医師として目の当たりにしています。
川口先生のディスカッション
・アルツハイマー初期の抑うつ状態の際:アリドネに変える、増量を検討する。佐伯先生より、抗うつ薬は抗コリン作用の副作用があるため、アセチルコリンが下がるアルツハイマー型認知症では、ほかの抗うつ薬を検討すべき。
・てんかん(意識減損焦点発作)合併の場合の対応:EEGで確認することが望ましいが、マンパワー的に難しい場合や、白判定で帰ってくる場合がある。腹部症状や一点凝視などの特徴的初見を家族に携帯で録画してもらう。SDMが得られれば、ビムパットなどを診断的治療で処方する。
・アリドネパッチ使用経験で有効性と安全性はどうなのか:有効性は貼付剤では吸収効率がいいので血中濃度が安定しやすい。内服は血中濃度の乱高下がある。
重度の認知症で服薬困難な人にはいい。軽症でも服薬に時間がかかる場合は、誤嚥性肺炎の予防にもなる。
・いつごろ受診すべきか?/専門家の紹介のタイミングは?:最近はMCIなどで治療が可能な薬も開発されているので、疑い段階の早期に受診することも考慮すべき。どのステージでも現状評価と適切な治療アドバイスを行うため、受診してほしい。佐伯先生より、せん妄・BPSD高度・家族のレスパイトケアが必要な場合は、積極的に入院を含めた複合的な治療を準備している。困ったら遠慮なく相談室に電話してほしい。
・27.5㎎から55㎎に変えるタイミングは?:フォローアップでHDSR15点以下、あるいは総合点数はよくても実行機能障害のカテゴリーによっては高度と判断できるときは切り替えがいいと考える
三ツ境 神奈川病院の現況
物忘れ外来ではBPSDの診断治療が物忘れのみと同程度の数
物忘れの患者の約半数に認知症治療薬を処方
BPSDのほとんどの患者に向精神薬を処方
BPSDのため自宅や施設での困難なケースの入院加療
入院加療により適切な退院先へ
最後に、コロちゃんケロちゃん 「認知症の治療に貼る選択肢」のポスターと一緒に