コロナ第一波終息時における脳疾患管理への考察
2020.05.30
平生でも脳に関する疾患・悩みは多いですが、コロナ禍となり、更なる負荷が加わっております。これも世の常、生きている限り課題はつきません。
我々としては、今ある情報の中で、妥当な生活スタイルを冷静に模索することが賢明です。個人レベルで行う防疫は周知されております。今回は、当院で扱う疾患患者さんへの注意喚起・アドバイスをいくつかあげたいと思います。
・不顕性感染への配慮:熱発や感染症状増悪しているケースは感染力が高くなりますので、該当する場合は当院での診療は控えていただいております。一方、感染者の多くは軽症(一般的なかぜ様)~無症候キャリアです。 この場合の感染力は不明ですが、スタッフと患者さんのマスク着用と、施設内接触部位の消毒を行っております。次の感染バリケードとしては各個人での一般的に周知されている感染対策となります。最終的には、かかっても負けない免疫力の維持(日々の体調管理)が必要です。
・フレイルに注意:特に脳卒中や認知症(MCIレベルを含む)患者さんは、コロナ施策によるフレイル・廃用性萎縮・認知症の増悪に配慮する必要があります。外出自粛やデイサービスの休止→足腰の筋力の廃用性萎縮→脳血流低下→社会活動範囲の縮小→廃用性萎縮・・・と負のスパイラルに陥ることで急激に増悪します。さらに、マスク着用での生活や、夏の到来で、熱中症リスクも加わります。対策としては、自宅内での筋トレ・ストレッチ・体操のルーチン化や、涼しい時間帯に人の少ない散歩コースを模索するとよいのではないでしょうか。
・頭痛に対する影響:運動不足や先行き不安、在宅勤務による作業環境の変化により、慢性頭痛が増悪するケースが増えています。個々の生活仕様を伺って、現状でベストな環境調整を一緒に考えましょう。一方で、対人ストレスや出勤ストレスのあった方は、自宅待機で頭痛が軽快しているケースもあります。社会の在り方が大幅に見直されており、余分であった社会的ストレス緩和には期待の持てる部分もあると思います。
・診断の遅れに注意:4月からの2か月の自験例で、くも膜下出血を発症して1週間前後経過しているケースが3例もありました。社会に配慮して外出自粛を過度に守るがゆえ、自身の違和感を我慢しすぎて診断が遅れてしまう可能性があります。脳神経疾患の中には、軽微な症状であっても重大な前兆である病気があります。普段とは異なる違和感がある場合、感染対策には配慮お願いしたうえで、積極的にご相談ください。
・日々の健康習慣幅の縮小:外出自粛やマスク着用、トレーニング施設の休止など、健康増進のために日々行っているルーチンに制限をきたしています。コロナとのうまい付き合い方が不明確な今は、辛抱して妥協策を個別に検討する必要があります。特に高齢者は、上記フレイルへの配慮から、注意が必要です。
今の状況は、諸行無常などといわれているがごとく、常に移ろいます。今までは防戦一方な印象ですが、一次予防の確立・発症時の重症度分類による個別対策・一部の播種性血管内凝固DICのような重症例に対するICUプロトコルの確立・ワクチンによる集団免疫・・とテコ入れは迅速です。全人類共通の課題でもあり、研究機関・製薬業界・医療機関のヒートアップは過去類をみないものです。
当院の診察でテンポラリーに気を付けていることは、診療所内に極力3密をつくらないことです。診療の質を維持して簡にして要な診療に集中して参ります。また、ファックス処方・電話再診のほか、現金接触低減を鑑みてクレジットカードを導入しております。