サイバーナイフとは

新緑脳神経外科・横浜サイバーナイフセンター医局忘年会に参会させていただきました。私が開業する前、2年にわたり脳疾患に対するサイバーナイフの勉強の機会をいただき、またホスピタリティを追及したクリニックのありかたを勉強させていただきました。新緑とのご縁がなければ、現在の自分、ほどがや脳神経外科はなかったといっても過言ではありません。院長の太田誠志先生、副院長の帯刀光史先生、内科部長の永川博康先生、頭蓋外全身のサイバーナイフ治療担当の小池泉先生(横浜市立大学放射線治療部講師)とサイバーナイフ治療につき談義しました。

サイバーナイフとは、右の写真のような装置(新緑脳外科より)で、患者さんは寝ているだけで数十分で体の中の腫瘍が消失していく最先端の治療です。入院は不要で通院で効果を得られます。悪性腫瘍であるほど放射線治療効果は絶大です。近隣の総合病院がん治療医からの依頼を多く受けている一方、脳神経外科で治療困難な腫瘍(聴神経腫瘍、グリオーマ、転移性脳腫瘍)などにも有効です。当院の患者さんにも適応があれば検討いただいている治療法です。太田院長はじめ先生方には引き続きご指導いただき、ともに良質な地域医療を提供していきたいと考えます。

関東ラグビー脳神経外科医会

医学部時代、ラグビー関東医歯薬リーグで共に戦った脳神経外科医で連携会をしました。12/2早明戦でメディカルドクターを務めた関東ラグビーフットボール協会 医師派遣委員会委員長、福田先生(千葉徳洲会)の声掛けで、その後秩父宮近くで集まりました。

日本医科大学、順天堂大学、慶応大学、東邦大学、横浜市立大学のほぼ同世代の脳外科医が参集しました。これからの顕微鏡手術、頭蓋底外科、神経内視鏡、てんかん外科、脳血管内治療を牽引する意欲あふれる先生方です。学会以外のプライベートの場で、大学同門を超えた顔の見える交流・連携は医療の質の向上・均てん化に欠かせません。培ったチームワークで、互いに切磋琢磨してまいります。

良質な脳卒中診療にむけ

首都圏で活躍する同世代脳血管内治療医と情報交換会をしました。血管内治療とは、カテーテルで血管の細いところにステントを入れたり、動脈瘤をコイルで閉塞したりし、開頭術にくらべて低侵襲で急速に発展している治療法です。兄貴分である森本先生(新都市脳神経外科院長)のほか、私と同年齢の3人の脳血管内治療医、早川先生(筑波大脳神経外科講師)、郭先生(慈恵医大、脳神経外科東横浜病院副院長)、清水先生(横浜市大脳外科医局長)と最先端の情報・首都圏の脳卒中ネットワークにつき情報交換しました。

良質な脳卒中診療は、予防→早期発見→急性期治療→回復期リハビリ→再発予防の循環を円滑に行うことが必要で、かかりつけ医と急性期病院とリハビリ病院の連携がカギを握ります。森本先生は新都市脳外科内での迅速なチームワーク作りに徹底しており、急患受け入れから診断・治療の時間短縮において、学会や機関誌でも繰り返し啓発されています。久しぶりに会った早川先生は、横浜市大ラグビー部同期であり、学生時代辛苦を共にしてきました。今では、日本の脳血管内治療では大きな存在となっており、昔も今も見習う点がたくさんあります。公式の会ではなかなかできない議論ができとても有意義な時間でした。

もやもや病 バイパス手術

市大関連施設からの要請に応じて、出張手術をしています。

今回は、成人発症もやもや病です。生来健康で、ウェイトトレーニングの最中に重度の頭痛となりQQ搬送されました。MRIでは大脳円蓋部のくも膜下出血がありました(写真中央)が、脳動脈瘤や脳動静脈奇形、静脈洞閉塞症はなく、もやもや病がみつかりました(写真左)。幸いADLは改善しましたが、安静時脳血流低下があり、バイパス手術となりました。外頸動脈系からの自然な血行路もあり、中硬膜動脈を橋渡しして、隙間にダブルバイパスを行いました(写真右)。

運動→頭痛→くも膜下出血で見つかったモヤモヤ病ケースは私も初めてでした。運動時頭痛を侮ってはいけないと改めて感じました。

 

開院2年を迎えて

 

おかげ様で開業2年が経過しました。横浜市外から訪れる方も多く、診察券番号6000を超え、かなり忙しくなってきました。今までのところ、来院理由としては頭痛が圧倒的に多く、3101名と半分は頭痛外来でした。もの忘れ・認知症診療目的での来院は、819名でした。そのほか、脳卒中、脊椎脊髄、外傷、顔面けいれん、てんかん、パーキンソン病、脳ドックなど多岐にわたります。

脳神経外科手術や入院治療が必要な場合は、近隣の病院から東京の病院に至るまで、各領域の専門医と連携を密にしています。横浜市大脳神経外科の医局からも、血管内治療・脊椎脊髄・脳腫瘍の各領域の専門医師が定期的に代診に来ていただき、当院でセカンドオピニオンを伺うことができ私も患者さんも助かっています。有能なスタッフにも恵まれ、大事なく運営できていることに感謝いたします。

かなり混雑する時も増えてまいりましたが、診療の質を下げないよう頑張ってまいります。お待ちいただくこともあるかと思いますが、なにとぞご理解のほどお願いします<m(__)m>

てんかん治療アップデート

市民病院神経内科部長 山口先生主催のてんかん勉強会がありました。今回は、てんかん医療の中では第一人者である、新宿神経クリニックの渡辺雅子先生を講師としてお迎えして、ディスカッションをしました。

第一三共からの新規抗てんかん薬ラコサミド(ビムパット)の実際を検討いたしました。ラコサミドは、神経細胞のNaイオンチャネルを緩徐に遮断することで、部分けいれんを防ぐ新しいお薬です。Naイオンチャネルブロッカーとしては、長らくカルバマゼピン(テグレトール)がメインでしたが、より副作用がすくないラコサミドにより、より良質なてんかんコントロールが得られることが期待されます。

当院における診療では抗てんかん薬は、欠かせません。慢性頭痛の予防薬としてのバルプロ酸(デパケン)トピラマート(トピナ)、三叉神経痛に対するカルバマゼピン(テグレトール)、神経根症に対するプレガバリン(リリカ)。認知症合併の複雑部分発作や周辺症状に対する気分安定薬としてのカルバマゼピン(テグレトール)やバルプロ酸(デパケン)。脳腫瘍・脳挫傷後の二次性てんかんに対するレベチラセタム(イーケプラ)。レム睡眠行動障害や本態性振戦に対するクロナゼパム(リボトリール)。など、連日様々な処方をし、恩恵を得ています。

ただし、てんかん薬には少なからず副作用がありますので、今回新しく登場したラコサミドには期待したいと思います。

聴神経腫瘍

市大関連施設からの要請に応じて出張手術をしています。

今回は、70代の右聴神経腫瘍です。聴神経腫瘍は、良性脳腫瘍の一つで、片方の耳が聞こえないことで発症することが多いです。突発性難聴と診断されて、実は腫瘍でしたというパターンもあります。大きくなると、顔の動きが悪くなる、飲み込みや手足の症状が出現してきます。本症例(写真)は、増大スピードが速く、側頭骨の破壊も目立ちます。術中迅速病理もやや異型性が目立つとのことで、錐体骨部は定位放射線治療併用とし、亜全摘で顔面神経温存しました。

聴神経腫瘍は、前庭神経鞘腫というのが正式名称で、一部顔面神経由来のものがあります。最初は耳鼻科に受診されることが多く、経過が一般的でないと判断されると脳神経外科へ相談がくることが多いです。良性腫瘍ではありますが、大きくなると手術難易度があがりますので、小さいうちに対処することが予後良好につながります。近年は、定位放射線治療が進歩しているので、切らずに治るケースも増えております。

運動時の頭痛

運動の最中、特にウェイトトレーニングの最中に急に頭痛がした。しばらくして収まったが、その後同じ運動のたびに同じような頭痛になる。最近は運動時以外にもなることがある。

といった主訴で来院される方もいらっしゃいます。だいたい20-50才くらいで、男性に多いです。これは国際分類でいう運動時頭痛というくくりにはいるものです。上記のような典型的なものは、伺うだけでRCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)だなと思いますが、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血やRCVSの怖い状態でないかMRI+MRAが必要になります。間中信也先生の経験を伺ったところ、「RCVSのミニ版だよね」とのことでした。予防薬や痛みどめで改善がみられ、多くは1か月程度で自然に消退します。こどもの場合は、カロナールを運動前に内服します。運動時の水分補給に気を付け、頭痛時は冷却すると緩和されることが多いです。

後部筋群の筋筋膜損傷や、片頭痛、静脈圧亢進(いきみ)で増悪する二次性頭痛などが鑑別にあがります。初めて経験される場合は、頭痛専門医を受診したほうがよいと思います。

見逃してはならない怖い頭痛

動けないほどひどい頭痛や、意識障害・麻痺などがある頭痛は、明らかに脳に何か起こったと判断することは容易です。しかし、一次性頭痛と判別困難な程度の軽めの頭痛で、MRIで分かる二次性頭痛がいくつかあります。

当院でしばしば診断されるものの中に、可逆性脳血管攣縮症候群RCVS(写真左)と、椎骨動脈解離性動脈瘤(写真右)があります。これらは、症状が比較的軽微であったり、神経症状がでないので、診断が遅れることがありますが、一定の確率で本格的な脳卒中を合併します。

(写真左)可逆性脳血管攣縮症候群RCVSの代表的MRI画像です。トイレ・運動・精神的な興奮・シャワー・入浴・いきみ動作などでスイッチが入る雷鳴頭痛を繰り返します。雷鳴頭痛とは、1分以内に極大になる重度の痛みです。片頭痛も重度になりますが、自覚して1分以内で極大にはならないので、判別可能です。雷鳴頭痛で注意すべき鑑別診断は、動脈瘤破裂によるくも膜下出血です。一方、RCVSは発症初回では脳MRIは正常ですが、2週間ほどすると写真のように脳血管に攣縮がみられるようになります。場合によっては、出血や梗塞を併発しています。写真の症例は重度の攣縮があるため、入院しました。

(写真右)椎骨動脈解離性動脈瘤の代表的MRI画像です。右後頭部の痛みがあり、軽かったため様子をみていたようですが、改善しないため来院されました。痛みと同側である右椎骨動脈に血管のふくらみと狭窄があります。痛みは比較的鎮痛剤で改善しますので、「緊張型頭痛ですね」で自然に治っている場合もあります。しかし、頸を大きく動かしたり、血圧が高いと解離が進行し、くも膜下出血や延髄梗塞を併発します。頸コリが治らないから整体で首回すというパターンには注意が必要です。

これらは、比較的見逃されがちな怖い頭痛の例です。

横浜市大 神経薬理学教室

学位研究でお世話になった横浜市立大学医学部 神経薬理学教授 五嶋義郎先生と久しぶりに科学談義・情報交換しました。五嶋教授は、2008年より10年にわたり、横浜市立大学理事として、副学長や研究科長など大学運営に尽力されています。2020年には、日本薬理学会総会の会長をパシフィコ横浜で務められるとのことで、全国区でもその采配を求められています。統括する薬理学教室には、脳神経系の博士課程の医師だけでなく、医学部以外の基礎研究者も修練を求めて多く集まってきます。薬理学教室では、Lドーパやセマフォリンを中心とした神経構築・再生の基礎研究 Basic researchや、パーキンソン病や認知症・精神疾患への臨床応用研究 Translational  researchなど、幅広く行われています。

「最近どうだ。久しぶりに飲もう」とありがたくもお声かけいただきました。今注目している蛋白や受容体などの神経細胞科学から、大学学生教育に関する方向性などにわたりお話を拝聴させていただき、意見交換しました。科学は、大自然が形成したシステムを解明して生活に活かす学問であると思います。クリニック診療にも科学的視点は不可欠です。前の脳神経外科教授 川原信隆先生も、「医療も研究とおなじだよ。リサーチマインドがあるのとないのとでは雲泥の差だ」と語っていたのを思い出します。多くの素晴らしい先輩・仲間に生かされて今があると感じます。引き続きサイエンスをご教授賜るとともに、一緒に活動していきたいと思います。