エムガルティ(ガルカネズマブ)Up to Date

日本イーライリリー株式会社主催のエムガルティ(ガルカネズマブ)エキスパートカンファレンスがありました。横浜市の脳神経外科診療における恩師である たぐち脳神経クリニック院長 田口博基先生座長にて、頭痛診療の師匠である 間中病院名誉院長 間中信也先生より、「頭痛診療のファーストステップ~片頭痛患者さんを我慢の楔から解放できるか~」と題してご講演いただきました。

エムガルティ(ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤)が本邦で発売されて来月で1年を迎えます。間中信也先生からのエムガルティ発売後の講演をいただけたのは個人的に初めてで、大変興味深い内容でした。まず、今回のポイントは、エムガルティはパラダイムシフト(常識の転換)をテーマに発売されましたが、それを転じて、片頭痛患者のパラダイスシフト(安楽への移行)のカギとなる製剤であるという点です。私も小児喘息もちでしたので、「この息苦しさがなければみんなよりサッカーもかけっこもうまくできるのに」などと悩ましい幼少期を送った記憶があります。β刺激薬吸入が開発され、そこで苦しくなった時に発作が止まる感動がありました(片頭痛でいえばトリプタン製剤に該当すると思います)。また、息苦しい時は物事に集中できずなおさら運動などでるはずもなく、仕方なしと踏ん張っておりましたが、ステロイド吸入薬が開発され、ほとんど発作がでなくなり、作業効率が高まった記憶があります(片頭痛でいえばまさに今回のエムガルティなどの抗CGRP関連製剤に該当すると思います)。

エムガルティは、使ってみないとわかりませんが、患者さんによっては、ほぼ消失~治癒したのではないかという方も20%いらっしゃいます。そこまででなくとも、発作はあるが市販薬やトリプタンで寝込まなくて済んだという方が多くいます。間中先生の「我慢の楔から解放できるか」は、頭痛があることが当たり前としてあきらめ、活動の下方修正仕方なしとしてしまっている方を解放したいという願いを感じます。そうでない場合は、緊張型頭痛や心因反応、その他の一次性頭痛、見逃されている二次性頭痛があるかどうか再検討が必要です。また従来予防薬や漢方も功を奏する患者さんも多いので、ハイブリッドで生活支障ゼロをめざすことも可能です。

(下写真:会終了時に記念撮影いたしました。田口先生のもっている「改訂2版 ねころんで読める頭痛学 診断と治療: アタマがイタい頭痛診療の悩みをドクター間中がすっきり解決!! 」間中先生の新書です)

私はディスカッション座長を担当いたしました。最近はろくに論文も書いてない一介の地域頭痛治療医にもかかわらずお声かけていただけてありがたく思います。

(ポイント1)CGRP製剤の効果が予測できるか??高価な薬だけに、CGRPの関与した頭痛(いわゆる片頭痛)かどうかを事前にわかるかどうか。緊張型頭痛~片頭痛までシームレスに多段階にCGRPが関与するというお話もあります。これからの研究課題と思います。

(ポイント2)「見えない頭痛支障の見える化」元祖定量ツールは頭痛ダイアリーです。当院では私がつかみ切れていない頭痛の患者さんには勧めています。ただし、記入や解析は労があることもあります。そこでHIT6という、受診時点での支障度評価ツールがあります。こちらは、当院では初診、抗CGRP製剤導入・フォロー時は必須としておりますが、患者さん側からみても「私の頭痛って、こんなにわるいの?」「よくなってるじゃない」などの簡易なチェッカーになっている印象があります。

(ポイント3)「しゃべる絵本」今後普及していくと思いますが、平易な言葉とシンプルな動画で片頭痛の病態とエムガルティの及ぼす効果が短時間で理解できる内容となっています。当院でも本会事前に数人にみてもらいました。今後、パンフレットに組み込む・頭痛外来HPにリンクをはるなどのシステムができるとより拡散(啓発)されることと思います。