頭痛フォーラム2018

年1回開催されるエーザイ主催の勉強会がありました。日々外来診療をしておりますと、先端研究/エビデンスのまとまった情報収集できる機会がなかなかありませんので、とても助かります。

「頭痛とてんかん」「頭痛と認知症」「二次性頭痛」を中心に、講演がありました。

「頭痛とてんかん」前兆のある片頭痛にみられる閃輝暗点などの前兆では、大脳皮質拡延性抑制CSDという異常電位がみられます。てんかんでみられる神経細胞やグリア細胞の異常興奮性irritabilityとの相違が以前より議論されております。現段階では、まだ関係性はあるかもしれないという仮説レベルとのことです。一部の抗てんかん薬は片頭痛予防に有効であり、今後の展開に注目です。

「頭痛と認知症」慢性頭痛があると認知症になりやすいかというお話です。45歳未満女性の前兆のある片頭痛患者で、ピル・喫煙があると、脳卒中の頻度が増すという報告は有名です(Lancet Neurol 2012)。2015年のHUNT studyの報告では、慢性頭痛があると血管性認知症はやや増える傾向があるようですが、アルツハイマーやレビーその他の認知症との因果関係はないようです。血管性認知症は、動脈硬化による脳出血や脳梗塞が蓄積されて認知機能が障害されるものです。これらの観点からすると、慢性頭痛(特に片頭痛)は、脳血管障害の原因になる可能性が多少なりともありそうです。前兆のある片頭痛→うつ病→脳卒中を30-50歳のうちに次々に引き起こすCADASILという遺伝性疾患がありますので、慢性頭痛と血管障害の遺伝的なつながりは何かしらあるのではないかと思いました。

「二次性頭痛」脳卒中や蓄膿症など、頭痛の原因があるものを二次性頭痛といいます。蓄膿症や解離性動脈瘤などは、MRIで比較的診断が容易です。しかし、MRIがあっても疑ってよく見ないとわからない疾患があり、注意が必要です。可逆性脳血管攣縮症候群RCVS、脳静脈洞血栓症CVTは、毎度ちょっと診断が難しい疾患として話にあがります。また、頭痛持ちでない高齢者の、閃輝暗点や頭痛の原因として、アミロイド血管症CAAも話にあがりました。