片頭痛:漢方と抗CGRP抗体関連薬(大島先生よりご寄稿)

当院で非常勤外来を担当させていただいております、大島聡人です。この度、第31回日本脳神経外科漢方医学会学術集会に参加・発表をしてきましたのでご報告申し上げます。

本学会は、脳神経外科領域での漢方療法に関する研究に特化した学会であり、学術集会は年1回開催されています。私は今回で参加3回目、発表2回目でした。漢方療法に興味を持ったきっかけは、医師5年目ごろに西洋薬ではどうしても症状がすっきりと良くならない患者さんに漢方薬を試したところ、次の外来で驚くほど良くなったというケースを何例か経験したことです。その後、漢方医学を学ぶために勉強会やセミナーに参加して、そこで得た知識を実践して、実際に救われる患者さんを多く経験してきました。私が専門とするがん(悪性脳腫瘍)の診療においても、漢方薬は大活躍しています。漢方薬は、複数の生薬の絶妙な組み合わせによって、多面的な効能を発揮するのが持ち味です。したがって、西洋医学的には「不定愁訴」として扱われてしまうような一元的な解釈ができない症状に対しても、漢方療法では対応可能なケースがあることが魅力です。このように、西洋医学と漢方(東洋)医学は対立するものでは決してなく、むしろ相互補完的な側面があると理解しています。本邦では、漢方療法が保険診療で認められていますので、これを有効に活用しない手はありません。

私が今回発表した内容も上述のような観点に基づき、片頭痛診療においてパラダイムシフトを起こしているといっても過言ではないCGRP製剤(西洋薬)と、これに漢方薬を併用した場合の効能や実態について当院のデータをまとめたものになります。結論として、CGRP製剤と漢方薬は安全に併用可能であること、また気候変化やめまいに影響を受ける方には五苓散の併用が、薬物乱用頭痛に対しては呉茱萸湯の併用が奏功する場合が多いことを見出しました。

本学会は今後、名称を「脳神経漢方医学会」に改称し、外科にとどまらず内科も含めたより広い脳神経領域の学会となることを目指しているそうです。漢方医学は大変優れた治療法であるのは経験上間違いないと思っていますが、これが世界中に広がるためには科学的に質の高いエビデンスを蓄積していくことが必須と考えます。これこそが今の日本の漢方・東洋医学界に求められていることであり、私もごくごく微力ながら貢献できればと思っているところであります。

大会長(横浜市大脳外同門) 林明宗先生と

AJOVY発売2周年記念講演会

大塚製薬主催、AJOVY発売2周年記念講演会がありました。今回は、日本頭痛学会会長の所属する、大阪の富永病院から頭痛センター副センター長の團野大介先生をお招きし、日本頭痛学会理事の諸先生方(日暮以外)で構成され、久しぶりの現地+WEBのimpressiveな会でした。WEB参加が多い昨今、大阪より遠路来ていただけた團野先生に感銘を受けました。日暮は、クリニックベースでの頭痛診療およびCGRP使用状況につき、統計解析データなど報告いたしました。

團野先生の講演では、アジョビをはじめ最新の頭痛診療のエビデンスをお示しいただき、アップデートいたしました。小児・思春期から治療介入した方が生涯の障害が低減する可能性 70%の片頭痛の方々が頭痛外来に相談されていないためさらなる啓発必要 CGRP薬で改善がえられても地固め療法が必要 CGRP薬は薬物乱用合併例において有効 などご教示いただきました。

・片頭痛の状態が悪い患者さんでは、中脳水道灰白質に鉄沈着しているケースが多いです。團野先生から拝借したスライド(以下)では、鉄沈着と片頭痛の持続時間および発作頻度と相関するエビデンスが示されました。

・CGRP薬で大うつ病患者において45.5%、全般性不安障害の患者さんで45.8%で、それぞれうつ・不安が改善する報告が示されました。CGRP薬って、すごいくすりですね(‘ω’)ノ

・発作間欠期のwell beingを目指すことも重要であり、発作がないときでも不定愁訴があったり、brain fogがあったりしますが、CGRP薬はそれらも一掃するパワーがあり、このことは日暮も実臨床で患者さんからよく教えられます。團野先生からいただいたスライドでは、頭痛ありとなしの狭間の10日間の支障が見逃せない支障度となります。

目に見えない頭痛、奥が深く勉学の楽しみもあり、患者さんとの喜びの共感もあり、さらなる深堀が楽しみでもあります。

お役割の先生方と。
右より、團野先生 永田先生 秋山先生 ひぐらし 五十嵐先生

情報交換会の最後に残った横浜市の熱い頭痛治療家と。

右より、
・片倉町あかり脳神経内科・内科クリニック 金塚陽一先生
・横浜市立市民病院 脳神経内科部長 山口滋紀先生
・聖マリアンナ医科大学 脳神経内科教授 秋山久尚先生
・横浜青葉脳神経外科クリニック 古市晋先生
・いえまさ脳神経外科クリニック 張家正先生
・いとう横浜クリニック 伊藤健次郎先生
・ひぐらし
・国立横浜病院横浜医療センター 脳神経内科部長 上木英人先生

ヨガ-well being-自律神経/頭痛メンテ法

先週末、グランフェニックス奥志賀にて、人気ヨガインストラクターのエドワーズ壽里先生(株式会社IGNITE代表)と、横浜新都市脳神経外科病院院長 森本将史先生による、リトリート『Discover your well-being』がありました。

脳神経領域の症状はよく「ず・め・し」と言われ、それぞれ「頭痛 めまい しびれ」の頭文字です。手術や投薬治療が必要なものもは確かにありますが、自律神経失調による不定愁訴が多く含まれています。片頭痛も遺伝的素因に加え自律神経レジリエンスが弱くなると頻度重症度が高まります。

今回のリトリートでは、薬を使わない身体づくりをメインテーマに、ヨガ・トレッキング・瞑想、森本先生による自律神経メンテ法の指導『医学的⾒地からみる⼤⾃然でのアクティビティや滞在が脳に与える好影響』がありました。現代社会は、スマホ・PC画面暴露時間が長く、自然は疎遠となり、自律神経メンテに不十分です。うまく、これらを取り入れて病気にならない・悪くしない・薬を安易に使わないなどの警鐘を感じました。

参加者には、トライアスロン・フルマラソン・ラガーマン・砂漠ラン(これは主に森本先生)など、タフな方々が集まっていました。日暮は、日々筋トレや水泳などしておりましたが、圧倒的に体力持続力やメンタル静穏維持力に差を感じました。とにかくにこにこしながら腰・肩の姿勢がくずれない。そのままAM4時のイングランド戦をみて、翌日も元気にヨガをする。(※注 彼らは特別な訓練をされており、一般的には睡眠サイクルは重要です)

今回、ヨガ初心者日暮が覚えたことは、深くゆっくりと呼吸する 心をおちつかせて一本足で立つ 体幹を強める 感謝する 瞑想する 毎日続ける などです。当院は慢性頭痛・認知症本人とご家族など多く来院されますので、自律神経のメンテ指導 PC作業の姿勢や歩容の指導 生活スタイル上での改善指導に活かしたいと思います。

 

第一三共㈱研修会-エムガルティ/レイボー

第一三共株式会社、横浜支社スタッフに対して、頭痛診療の研修会-エムガルティ/レイボーの講演「片頭痛がおこることが当たり前ではない日常を実現するために」およびQ&Aを行いました。どうしたら効果的な治療に頭痛患者さんをつなぐか的な問が多かったですが、私見では、片頭痛の啓発はすでにCGRPパラダイムシフトから加速されていると思われ、焦らずともゆっくり確実に均てん化されるものと思います。

同会の前に、イーライリリー株式会社より、イタリアからの新情報として、CGRPのhead to head試験について説明を受けました。薬物乱用頭痛MOHがある場合は、エムガルティが優れているということ。また、イタリアでは、アイモビーグは2本打ちが基本で、抜群の低減効果がでているなど拝見しました。研修後、ほっこりと第一三共の所長さん・担当者さんと情報交換しました(^^♪

横浜内科学会-神経研究会 納涼会/ACVS急性脳血管症候群

横浜内科学会-神経研究会 納涼会が、8月7日にありました。3年ぶりの納涼会です。本会は、年5回もちまわりで当番幹事をして、10月に第89回を迎える長寿の研究会です。次回は、長谷川泰弘先生(新百合ヶ丘総合病院 脳卒中センター長)より、神奈川県内科医学会-ACVS委員会(本会も共働)が啓発している「かかりつけ医向け 最新の脳卒中の早期発見法 急性脳血管症候群ACVS」についてご講演いただく予定です。

参加メンバー 左より、
川又純先生 かわまた内科・脳神経内科(神奈川区大口)1年前開業
山田人志先生 横浜内科・神経内科クリニック(南区弘明寺)横浜でパーキンソン病を一番診みている先生
丹羽義和先生 にわメディカルクリニック(神奈川区西寺尾)神奈川区のボス
田口博基先生 たぐち脳神経クリニック(港南区医師会理事 横浜内科学会副会長 神経研究会代表幹事)日暮の恩師
長谷川修先生 横浜市立大学(横浜内科学会副会長・大学区)医学部授業で教わった神経内科の先生
渡辺雄幸先生 渡辺医院(鶴見区)神奈川県医師会 常任理事
金塚陽一先生 片倉町あかり脳神経内科・内科クリニック(市民病院部長を経て3か月前片倉町に開業)
日暮

最後に、急性脳血管症候群ACVSについて:まず、原因はなんであれ、以下のような症状が突然あったら、クリニックや病院に速やかに受診しましょう。

今までは、一過性脳虚血発作TIAがよく使われていましたが、類似の症状でも原因は多岐にわたるため、下記のようなumbrella termができました。出血からTIA、TIAっぽいもの、梗塞もみられるものなどです。神奈川発で行う、今回のrevisionの最大の意義は、かかりつけ医目線でACVSを具体的に判定する基準を設け、啓発し、効果判定することです。

ACVSの概念:米国で脳梗塞、TIAの診断基準の議論が行われていたころに提唱された概念で、突発する vascular originの症状を呈するすべての患者に対する当座の診断名で、脳梗塞も脳出血も、非脳卒中も包含する(acute brain ischemia、acute brain hemorrhage、nonvascular diagnosis)umbrella termです。日本語にすれば「卒中疑い」とほぼ同義となります。この用語を用いる意義は、ACS(急性冠症候群、acute coronary syndrome)を初療段階の暫定診断名として取り入れて虚血性心疾患の救急医療を整備した歴史と同様、かかりつけ医が初療の主役となりうる脳血管障害の救急医療整備に役立つ点にあります。これまで概念として示されてきたACVSですが、神奈川脳神経科医会では、脳卒中を広く疑うことのできる、突然発症の病歴、神経機能障害の病歴の2つの問診をもとにACVSの暫定診断名を与えることを合意しました。

片頭痛治療の新時代~エムガルティからはじまる未来~

日本イーライリリー株式会社主催 Yokohama Migraine Clinical Conferenceがありました。子安脳神経外科クリニック 院長 子安英樹先生 座長のもと、品川ストリングスクリニック 理事長/院長 山王直子先生より、「片頭痛の新時代~エムガルティから始まる未来~」と題して、ご講演をいただきました。日暮はDiscussion facilitatorのお役をいただき、Discussantとして、のげ内科・脳神経内科クリニック 院長 渡邊耕介先生、大倉山脳神経外科クリニック 院長 矢崎弘人先生、横浜市立大学脳神経外科 大島聡人先生(当院頭痛外来代診)にご参加いただきました。野毛の渡邊先生とは脳波検査でもよく地域連携させていだいております。

山王先生は横浜市立大学卒業の同門でもありますが、長く日本医科大学脳神経外科で下垂体外科のエキスパート、また開業してからは頭痛診療のエキスパートとして日本の頭痛診療を牽引するお一人です。何度かWEB開催ではご一緒させていただいたことがありますが、直接お会いすることができ、また目の前でご講演を拝聴できたことはありがたいことです。ゆっくり穏やかな口調で講演され、勉強もさることながら癒されました。

山王先生ご講演:片頭痛の影響による日本の経済損失は3600億円~2兆3000億円と報告により幅はありますが、命にかかわりませんが個々人の収入を大きく低下せしめる病気です。発作時は当然、学業・仕事を休むもしくは効率低下を引き起こすことに加え、発作間欠期にも予期不安や生活・仕事を制限する要因を引き起こします。現在片頭痛もちのひとで、月数回程度であれば市販薬セルフケアでOKでしょう。しかし、ストレス・人問題・生理・天候などにより片頭痛頻度が増悪してしまうと、生活支障は大きくなり、頭痛に配慮しながら/我慢しながら日々繰り返すことになります。反復性片頭痛EMが慢性化する確率は年間3%ですが、頭痛外来にはそのような方々が訪れます。「まずは片頭痛を疑え」といわれますが、両側肩こりを強調されると慣れないと緊張型頭痛と誤診してしまうことがあります。話は変わりますが、山王先生のクリニックでは、CGRP薬1000人をこえる処方があり、日暮の知る範囲ではおそらく日本一であると思いますし、それだけCGRPを使わない頭痛患者も多く抱えておられると思われ、その熱意に感銘をうけました。

Discussionでは、「頭痛難民をたすけよう!」というテーマで行いました(リリー側の設定です)。頭痛難民:市販薬の服薬回数が月10回を超え+医師にかかるも同様の痛み止めを出され+予防薬の縁がなく+MRIで異常なし=我慢するしかない人生のburdenと諦めている方々 と日暮私見で定義します。

①「片頭痛によるADL障害をどのように確認していますか?」渡邊先生:問診をしっかりして、生活支障の度合いやプレゼンティーズム(仕事中頭痛発作にて障害される作業効率)を評価する。矢崎先生:片頭痛にともなう随伴症状の支障度(感覚過敏・嘔気・気力減退・めまいなど)に注目して問診する。大島先生:支障度評価ツールHIT6やダイアリーにて客観的に患者と状態を供覧する。子安先生:CGRP製剤が効かなくなってきたと考える患者に関して、同時期に気候やストレス因子が実はあって足を引っ張っているのではないかと確認する。

②「患者さんにどのようにエムガルティ開始を提案していますか?」渡邊先生:あらかじめ「しゃべる絵本」など資材をもちかえっていただき、コスパなどについて検討していただき、患者主導で開始を決めてもらう。矢崎先生:片頭痛の方にはあらかじめ「しゃべる絵本」を提示しておき、急激に増悪した場合に迷いなくエムガルティ注射を申し出できる準備をしておく。大島先生:「EBMの大島」と言われる大島先生ゆえに、客観視データを根拠にスタートする(HIT6やダイアリーからわかる頭痛頻度・重症度)。子安先生:まずは従来予防薬をトライするがうまくいかない場合はエムガルティが選択肢になるようあらかじめ「しゃべる絵本」などで情報収集をすすめている。山王先生クロージング:「しゃべる絵本」をあらかじめ提示して、患者主導で選んでもらうことが重要。ストリングスクリニックは頭痛患者が多く、待合などで患者さん同士で体験を共有したりしている。

※しゃべる絵本は、各医院でもらえます

保土ヶ谷区開業医連携会

保土ヶ谷区開業医懇親会がありました。当院の患者さんもよくご存じの先生方ではないでしょうか?宮川親分の発起により参集しました。コロナもやや気になるとことでの少人数のマスク会食。日々連携している御礼とともに患者さんにとって便利な連携をしていきたいと思いました。

左より、
くぬぎ台診療所 青柳祥夫先生(内科・小児科 糖尿病内科)
天王町めぶきクリニック 久保田真司先生(心療内科・精神科)
宮川内科小児科医院 宮川政昭先生(内科 日本医師会 常任理事)
保土ヶ谷あだちクリニック 足立清太郎先生(内科・消化器内科)
日暮
いきいき杉山クリニック 杉山肇先生(内科・循環器内科 保土ヶ谷区医師会 理事)
ゆずりはクリニック 杠葉良先生(内科・消化器内科)
横浜よつもと眼科 四元修吾先生(眼科)

診療情報提供書のやりとりをしているのとは別に、顔の見える連携ができました。区内にもほかにも多くの先生方や病院と連携しています。今回は、貴重な宮川親分の会でしたので、アップしました(^^♪

大学頭痛外来と漢方頭痛クリニック-エムガルティ

日本イーライリリー株式会社主催、東日本講演がありました(北海道~新潟・長野・山梨・神奈川エリア)。講演①では、信州大学医学部付属病院 脳神経外科講師/脳血管内治療センター副センター長 花岡吉亀先生より、大学ベースでの頭痛診療について。講演②では、千葉の らいむらクリニック院長 來村昌紀先生より、頭痛診療における経営に関してご講演いただきました。日暮は座長を担当し、Discussuntとして、当院頭痛外来代診でもある横浜市立大学脳神経外科 大島聡人先生に加わっていただきました。

①花岡先生より:2022/5月から、信州大学脳神経外科において頭痛外来を設置しています。片頭痛は命にかかわらないものの、低頻度→頻度上昇→慢性片頭痛と増悪とともに生活の質が低下するケースがあり、早期診断早期治療が重要です。脳神経外科頭痛外来には、「最後の砦」として、片頭痛にお困りの患者さんが駆け込みます。現在、MRIで異常なしで急性期治療(いわゆる痛み止め)で流してしまう対応が問題視されており、薬物乱用となると慢性化移行が20倍増え、難治性になります。また、正確に片頭痛と診断することが重要です。急性期治療(頓用薬)を安易に服用しないよう患者教育も重要です。片頭痛の状態が悪い場合は、1-1.5年のスパンで予防薬治療を継続することが重要です。その後30%に再増悪がありますが、一度治療により改善した同様の治療で効果が期待できます。明確なプロトコールもお示しいただき、在宅注射ができるひとは移行することにより、シンプルかつ効果的な治療ができます。

②來村先生より:來村先生は、過去にも講演をご一緒させていただいたことがあり、漢方を駆使した頭痛診療のエキスパートです。今回は、頭痛診療での経営のコツをお話いただきました。かなりの頭痛患者さんを診られており、先生自身やスタッフの健康管理の重要性、頭痛診療自体は厚生労働省が管理料加算などの設定がないので、売上がでない(儲からない)分野です。一方、管理ツールを用いながらじっくり時間をかけて労の多い側面もあります。その中で、エムガルティの自己注射ができる方には、3本購入して在宅移行していただくことで、来院回数低減を図るなどアイデアをいただきました。大島先生の質問より、CGRP製剤と漢方のハイブリッド治療や、呉茱萸湯などによる薬物乱用脱却のアイデアをいただきました。

Discussion①:「シンプルで効果的な片頭痛治療の工夫」として、HIT6やしゃべる絵本を活用し、患者理解を深め、ダイアリーをみながら地道にPDCAサイクルでセルフケアに持っていく。

Discussion②:「片頭痛患者さんにとっての院外処方とは」では、3本もちかえることで、コントロールを患者主体にしつつ、外来に余裕を生む。エムガルティの注射デバイスは扱いやすい。クリニック平均診療単価高騰を抑える。

Closing:低頻度→慢性化に早期に気付き、first lineとしてCGRPを導入することがコスパがよいと思います。受験・大会・失敗できないプロジェクト・休職退職危機などに直面し、片頭痛増悪傾向にある場合、エムガルティというバフ魔法(ゲーム用語)をかけ、精神的レジリエンスを獲得できれば、人生のチャンスが広がるかと思います。

片頭痛の可視化-エムガルティ

日本イーライリリー株式会社主催、東日本講演がありました(北海道~新潟・長野・山梨・神奈川エリア)。演者は、愛知県長久手古戦場近くの、あいち脳神経クリニック 院長 丹羽あいち先生より、「片頭痛の可視化-Shared Decision Making」と題して講演いただきました。日暮は、座長およびDliscussion座長を担当し、Discussuntとして、当院頭痛外来代診でもある横浜市立大学脳神経外科 大島聡人先生に加わっていただきました。CGRP製剤導入に際しては、患者さんの生活支障度をよく聴取し、増悪している環境因の分析を行い、また懐事情も勘案して合意を得ておこなうべきでありますShared Decision Making。支障度に関しては、頭痛ダイアリーやHIT6による定量化が重要です。丹羽先生より、ダイアリーの内服タイミングのズレや、HIT6精読によるどの局面が重症度に寄与しているかを分析が重要であるとお話がありました。頭痛は、本人の訴えから形成される病態であり、本人のみぞ経験する支障度をダイアリーなどで定量することで可視化が可能であると共感しました。

Discussion では、①梅雨・台風時期などの季節性の症状増悪にどう対応するか。②在宅自己注射による恩恵 について議論しました。当日は午後から雨となり、当日代診を依頼していた大島先生から、片頭痛増悪患者さんの対応が多くなったとのことでした。①については、患者さん毎に、つらい時期は様々ですが、梅雨・暑さ・台風はひとつ片頭痛の悪くなるシーズンですので、急激に増悪するケースもあり、駆け込み注射を希望するケースもあります。一方、②の在宅自己注射に関しては、3本持ち帰り+付加給付恩恵が得られる場合があります。来院頻度の低減や、注射の時期や追加施注タイミングを本人主導で行えるメリットがあり、必要十分性を探る上でもよい手法ではないかと考えます。

頭痛診療座談会-アイモビーグ

アムジェン株式会社主催、「Migraine Expert Meeting」がありました。今回は、仙台頭痛脳神経外科クリニック 院長 松森保彦先生 を特別演者として招聘し、富士通クリニック 頭痛外来 五十嵐久佳先生座長のもと、日暮が前振り講演を行い、横浜・川崎中心の頭痛診療に熱心な15人で忌憚のない意見交換、実際の頭痛臨床の悩み事など議論しました。

松森先生より、「再考、頭痛外来/CGRP製剤」と題して、最新エビデンスを多くお示しいただきました。松森先生は日本の頭痛学会・頭痛診療の未来を牽引する首脳のお一人で、いつもわかりやすいご講義をしていただけます。今回、日暮の勉強のためにスライドのいくつかを依頼させていただきましたところ、全スライドを日暮にくださり感銘の極みです。その中から、当ブログをご覧くださっている第一に患者さん、脳神経科の先生方、医療関係者へ3つのスライドを紹介させていただきます。(上スライド)現在、頭痛診療の核となっている抗CGRP関連薬/CGRPmAbは、窓口支払いも高額ですが、加入している保険者によって、付加給付でまとめ買いをすると支出を低減することができます。

(上スライド)CGRPmAbに比較的慎重な意見を提示していたEHF: European Headache Federationの最新の知見では、CGRPmAbは予防治療薬のfirst lineと提案されました。(上スライド)CGRPmAbの現在解決されつつある問題と、次の課題が提示されました。日暮も外来で、患者さんとよく相談しながら検証・実行していきたいと思いました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~日暮からは、頭痛ダイアリーアプリへの期待とバージョンアップの必要性やCGRP周りの医療経済に関しお話させていただきました。片頭痛日数が月8日を超えるような高頻度反復性片頭痛に薬物乱用頭痛が加わる場合、放置することによる労働生産性低下・収入減少は大きくなります(下図)。毎月10万相当の損失が発生する見込みになり、アイモビーグはじめとしたCGRPmAbの活用により大幅な改善が期待できます。

五十嵐先生facilitatorのもと、湘南慶育病院 院長 鈴木則宏先生や、横浜新都市脳神経外科病院 名誉院長 いとう横浜クリニック 伊藤健次郎先生など大御所も加わり意見交換しました。以下、日暮が記憶に残った話題をいくつか提示します。

「MRIでおわらない頭痛外来」問題に関しては、近年の啓発により若手脳神経科医の頭痛診療に対する関心が上がって改善が期待できそう。

QQ受診するほどの頭痛で異常ない場合でもそのまま返してしまう傾向があるのはよくなく、頭痛外来へつないでほしい。

産業医・学校医などがelearningなどにより「たかが頭痛」と誤認している視点が改善している傾向がある。

頻度・重症度が増悪している場合、早期のCGRPmAb導入が望ましい。

CGRPmAbは3剤あるが、持ち帰ってパンフレットで検討してもらい患者に選んでもらうのがよい。

夜遅くなってしまい、最後に残ったメンバーで、五十嵐先生・松森先生を囲んで記念撮影