認知症診療の落とし穴「正常圧水頭症」

日本認知症予防学会 神奈川県支部 第12回学術集会がありました。今回は、誠心会理事長 佐伯隆史先生(あさひの丘病院・神奈川病院など)と座長を担当しました。

講演1では、認知症患者の食事に関するケア、注意点などを、大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室 准教授 野原幹司先生より、ご講演いただきました。野原先生は同領域ではご高名な先生で、多数の著書もあります。お名前で検索すると、認知症口腔ケア・食事ケアのノウハウ本がたくさんでます。ケアをしている家族やコメディカルは要チェックです。

講演2では、当院にも代診にきていただいている、横浜市立大学付属市大センター病院 脳神経外科 助教 高木良介先生より、正常圧水頭症についてご講義いただきました。余談ですが、高木先生のお父様は、安孫子聖仁会病院 正常圧水頭症センター長 高木清先生で、同領域では日本のトップリーダーで、多数の著書もあります。良介先生は、正常圧水頭症への熱意やノウハウは同世代では群を抜いていますので、貴重な機会でした。

いただいたスライドを提示します。年をとると、上記の症状がよくみられます。中には、正常圧水頭症が原因となっているケースもあり、いわゆる「治る認知症」といわれております。「治る歩行障害・尿失禁」とも言えます。日暮も日々多くのご高齢者・認知症患者さんを拝見しておりますが、正常圧水頭症が絡んでいるかどうか、治療で改善するかどうかの判断はとても難しいと考えており、高木先生にサポートしてもらっている次第です。

講演会の後半では、横浜市立大学の正常圧水頭症診療に尽力され、日本のトップリーダーとなっている先生方にも加わっていただけました。以下、今回参会してくださった正常圧水頭症をしっかり見てくれる信頼できる先生・施設一覧を掲示します。是非ご参考ください。とにかく、だれでもみれる疾患ではないので、おすすめです。

今回の会は現地・ズームハイブリッドでおこないました。現地は、慈恵会医科大学付属病院 精神医学講座 主任教授 繁田雅弘先生のご実家をケア施設に改装した平塚の栄樹庵からおこないました。繁田先生のご先祖様の前で。左から、佐伯先生 高木先生 日暮 内門大丈先生(メモリーケアクリニック湘南 理事長 本支部の支部長)と。

脳神経機能外科とは~パーキンソン病・難治性痛み

第一三共株式会社主催、臨床に役立つ脳神経機能外科WEB SEMINARがありました。横浜市立大学市民総合医療センター 脳神経外科 部長 坂田勝巳先生からのはからいで、テレビやyotuberとしてもおなじみの「痛み」の大家である横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック内科 診療部長 北原雅樹先生の座長という貴重な経験をさせていただきました。

オープニングは、横浜市立うわまち病院 脳神経外科 第二科長 東島威史先生でした(One of HC)。以前当院代診もされており、センター病院のDBS機能外科を担当されておりました。

講演1は、パーキンソン病に対するDBS機能外科について、木村活生先生に最新のパーキンソン病治療に関してご講演いただきました(木村先生は同領域においては神奈川県ナンバーワンと思います)。座長はまたまたすばらしい方で、長く国立病院横浜医療センター 脳神経内科 部長を務められ、頭痛専門医として頭痛外来に注力しておられる高橋竜哉先生でした。内容は高度すぎて日暮には難解でした。生活支障度に応じて治療目標を設定し、凝固・刺激・バクロフェンなどで薬剤抵抗性パーキンソン病の治療をされております。「とにかくパーキンソンは木村先生にお任せしよう(^^)/」と思いました。

講演2は、北原先生より痛みのレクチャーをいただきました。痛みの原因が、脳・脊髄・末梢神経・筋骨格の病変で発生しますが、超高難易度な患者さんが北原先生のところに集まってきます。頭痛・リウマチ・線維筋痛症・腰痛。。。。日暮からも過去数件紹介を試みましたが、予約が1年先までいっぱいでなかなか救われない方もいらっしゃいました。今回を機に、「何卒お早めに~<m(__)m>」と嘆願いたしました。治療は、非薬物療法(鍼灸や認知行動療法)から薬物(抗てんかん薬・タリージェなどの神経障害性疼痛の薬・抗うつ薬がメインになります。痛みだからロキソニンなどの鎮痛薬かと思いきや、登場しません。当院頭痛外来でも頭痛に対しては、頓用で低頻度で使う程度です。

最後に、記念撮影(^^♪

Youtuber 北原雅樹先生 として、以下のURLを紹介いたします。

慢性の痛み講座 北原先生の痛み塾 – YouTube

第33回NPネットワーク

NPネットワーク研究会と第一三共株式会社共催で、第33回NPネットワーク研究会がありました。NPとは、Neuro-が単語につく場合、脳神経という意味で、脳神経内科 脳神経外科 神経放射線 などが該当します。一方、Psycho-が単語につく場合は、精神科 心療内科などが該当します。本会は、脳の専門家が集って、専門領域を超えて情報交換する会です。この伝統ある33回目で、当院での頭痛診療についてお話する機会をいただきました。

前半は、日本の認知症診療の総本山のひとつである、国立長寿医療研究センターの島田先生より、「Active Life Styleの獲得によるフレイル・認知症予防について」を拝聴されていただきました。老いるにつれ、老病死に関わる課題がふえていきます。フレイルとは、活動性低下→筋力低下→廃用性筋委縮→活動性低下という負のスパイラルで誰しも直面します。運動・家事・社交・脳トレなどの日課をルーチンとして組み立て維持することが大切と学びました。これらは筋力のみならず脳血流や認知機能の維持とも表裏一体ですので、個々人のオーダーメイドのスタイルを一緒に考えていきたいと思いました。

島田先生はズーム参加で、左から、内門大丈先生 私 馬場康彦先生との現場写真をいだたきました。私の方からは、当ブログでも多く紹介している内容を紹介いたしました。精神科の先生方の参加が多い会ですので、片頭痛予防注射薬エムガルティを使うことで、片頭痛の頻度重症度が低減するのみならず、不安・抑うつも軽減する傾向がある論文を紹介させていただきました。(下図:3つあるコラムの右の上段が3か月と6か月のエムガルティ継続で不安スケールが減少 下段が3か月と6月のエムガルティ継続で抑うつスケールが改善していることが示されています)

エムガルティup date+「我慢の楔」を解放する

日本イーライリリー株式会社主催、「Emgality Team medical care conference in Kanagawa」がありました。前半は、間中病院 名誉院長 間中信也先生より、「片頭痛患者さんを我慢の楔から解放できるか?」と題してご講演いただきました。後半は、のげ内科・脳神経内科クリニック 院長 渡邊耕介先生より、看護師セッションと在宅自己注射導入に関する議論がありました。

間中先生の頭痛に対する探求心にはいつも感銘を受けており、今回も新しいスライドと大切な啓発をご教示いただきました。エムガルティは副作用がなく有効率90%におよぶ稀に見る名薬剤であると思います。我慢癖の方は、頭痛慢性化しやすく、brain fog → crystal clearの体験はすべきであると共感しました。PAG(中脳水道周囲灰白質)の鉄沈着が頭痛の慢性化(片頭痛の難治化)に影響するエビデンスが示されました。この器質的変化が発生してしまうと不可逆(元に戻らない)となってしまうので、死ぬまで片頭痛と付き合う人生となってしまう可能性があります。(以下、間中先生より拝受)
ゲスト参加いただいた、国立病院機構横浜医療センター 脳神経内科 部長 上木英人先生からもご質問いただきました。
「18未満へのCGRP投与」:18歳から安全性確認されている薬剤であるが、より若年でも恩恵が得られる可能性がある場合は十分なムンテラと症状詳記をして使用することも選択となると考える。
混合型について」:以前汎用された用語で、緊張型頭痛+片頭痛があると判断された場合に診断された用語。現在はシームレスで、エムガルティで緊張型頭痛と思っていた頭痛も消えるケースもある。
片頭痛が常態化(慢性化)すると、自律神経失調になるエビデンスも増えてきています。また、エムガルティなどのCGRP製剤で、メンタルクリニック処方が軽減されるケースも散見されます。(以下、間中先生より拝受)
後半Discussion(渡邊耕介先生):
【CGRP導入について】
間中病院 看護師 中村さん講演:
・Nudge(より良い選択を自発的に取れるよう手助けする)の姿勢が大切
・HIT-6 60点を境目に、
 60点以下→うまくお薬でコントロールできているようですね!
 60点以上→日常生活に支障が出ているようですね→CGRP推奨されるため「しゃべる絵本」を見ることから触れてもらう
間中先生:
確かに特に若い患者さんだと、高薬価を理由に断るケースが多いが、「このお薬は本当によく効くから、1回試してごらん。半年、3回でも辞められるからと励ます。」
渡邊先生:
HIT-6はクリニックで活用しているが、私の前で書いてもらっているため、患者さんが本音で答えられていないのかもと感じた。看護師さんと一緒に書いてもらうことで、もっと患者さんが素直に応えてくれるかもと感じた。
【在宅自己注射について】
渡邊先生:
クリニック側のメリットとしては、CGRP製剤の在庫を減らせる(保冷庫の場所をとるため)。デメリットとしては、指導に時間が取られる(だいたい、自己注射の指導に15分、キットの説明で10分くらい)
患者さん側のメリットとしては、受診回数を減らせる。デメリットとしては、自己注射に対する恐怖感が強く、まだ打てない人が多いのが現状です
【自己注射導入のコツ】
聖マリアンナ医科大学 内科学(脳神経内科)教授 秋山久尚先生:
患者さんをの自己注射をうまくできていることを積極的に褒めて自信をつけてもらう。デモ機で練習をしている時から、「すごく上手に出来ていますよ!」「出来ますね!」と声をかける。
日暮:
自己注射に対しての恐怖心を取り除くのは簡単なことではないが、付加給付の制度などを紹介しながら、患者さんへのメリットを理解してもらうように根気強く提案することが大切。最後に、記念撮影。左から、秋山先生 間中先生 上木先生 渡邊先生 私(議論中は間仕切り/マスク/距離をしております)

薬局・ドラッグストアは最もMOHを発見しやすい場所

保土ヶ谷薬業会/アムジェン共催の勉強会がありました。担当薬局が、開業からお世話になっている加藤薬局で、現地+WEBハイブリッドだったので楽しくお話できました。薬剤師の先生方への講演は初めてですが、薬物乱用頭痛MOH(薬剤使用過多による頭痛)を併発しているような頭痛難民(適切な頭痛診療が必要であるが気づいてない/縁がない人)をもっとも発見しやすい立ち位置にあると感じています。啓発含め、いくつかスライド提示いたします。

頭痛の状態が悪い(=支障度が高い)と、本来のパフォーマンスでできる仕事量と質が低下し、労働生産性が低下していることが示されています。

海外(EUR)データですが、月8日を越えた先の労働生産性が大きく低下していることがわかります。転職・休職が必要となってしまう場合や、定時までなんとか仕事をできたとしても集中困難で生産性が大きく低下し、ひどくなった頭痛がおまけで帰宅についてきます。重度になると、新規チャレンジや困難に対する精神的レジリエンスが低下して、ダウンしてしまいます。

社会において、処方箋薬局やドラッグストアは、いつも市販薬を大量購入する人・医師から多量のNSAIDSを処方され続けている人などに触れる機会が多いと考えられます。疑ったら是非頭痛外来受診を勧めていただけたらと思います。ひいては、低下し続ける日本経済の底上げにもつながるのではないでしょうか(^_-)-☆

アジョビupdateーオートインジェクター・頭痛連携

大塚製薬主催、「最新の片頭痛治療」地域連携会がありました。昨年から発売された抗CGRP製剤は、総合内科専門医・神経内科専門医・脳神経外科専門医・頭痛専門医の4つの資格者しか扱えない、片頭痛予防注射薬です。今回は、横浜駅西口の前川メディカルクリニック院長 前川寛充先生と、せやクリニック副院長 川口千佳子先生と情報交換いたしました。前座として、私の方から現状提示し、座長は、戸塚のいえまさ脳神経外科クリニック院長 張家正先生でした。

前川先生は、横浜駅前のかかりつけ医として、総合内科に加え、頭痛も多くみられております。アジョビの使用状況などご教示いただき勉強になりました。川口千佳子先生は、頭痛専門医でもあり、都内の有名頭痛クリニックにもサポートに行かれています。電子カルテと連動する頭痛ダイアリーを拝見させていただきました。アジョビは、もうすぐオートインジェクターになり、在宅でも打てるようになっていくものと期待されます。

横浜市は人口も多く、効果的な医療をうけられていない頭痛難民がたくさんいると見積もられております。頭痛を病気として認識せず我慢があたりまえと苦しみながら生活している患者さんも未だ多いと思われます。頭が痛い・吐き気がする・めまいがする・天気や生理で具合が悪い、さらには仕事や学校を休むなどは、(簡単に?)治療で改善が期待されます。片頭痛以外の頭痛原因もあり、まずは「おや?」と気づいたら、我々を受診ください。

最後に前川先生を囲んで記念撮影(^^)/ (張先生はカナダより)

HC会ー脳外科リーダーになっていく後輩たち

2010年医学部卒業-2011年市大脳外入局した先生方との情報交換会がありました。小生が医局長で勧誘した先生方なので、ヒグチル会(日暮チルドレン会-HC会)などと自然に設定されました。ありがたいことです(-_-)。ズーム含め6人参会されましたので、これからの横浜市大・神奈川の地域医療・全国クラスのオピニオンリーダーとなっていくものと思われますので、この会のためにつくっていただいたスライドを各先生1枚ずつピックアップして紹介したいと思います。(あいうえお順)

下吹越航先生(横浜市立大学センター病院 脳神経外科):今回はズーム参加されました。血管障害二刀流をめざして横浜市の中核病院で頑張っています。文科省科研費も取得し、学位取得めざして奮闘中。

高寺睦美先生(横浜市立みなと赤十字病院 脳神経外科):国内留学では辛い時間を過ごしたようですが、英論文表彰され学位取得しました。県内トップレベルの手術数を誇る横須賀共済病院から、横浜市立みなと赤十字病院へ異動し、また新たな環境で奮闘中。

高山裕太郎先生(横浜市立大学附属病院 脳神経外科):市大ラグビー部の後輩で、当院てんかん外来サポートしてもらっています。本邦のてんかん総本山のひとつである国立精神神経医療研究センターで国内留学を経て、持ち前のチーム力を活かして、市大福浦でてんかんチーム医療に奮闘中。

當銀壮太先生(藤沢市民病院 脳神経外科):入局後ひたすらに地域医療に邁進しております。血管障害や外傷などはやはり基幹病院では多いです。私と同じく、脳の専門町医者としての道も模索して奮闘中。その折は、一緒に頑張ろう(^^♪

東島威史先生(横須賀市立うわまち病院 脳神経外科):昨年度まで当院てんかん外来サポートしていただいておりました。てんかんはじめ機能外科に注力しており、今後精神疾患も機能外科で治療される時代になるような気がします。プロ麻雀士でもあり、麻雀と脳科学のハイブリッドなど彼にしかできないことにも奮闘中。

三宅勇平先生(横浜市立大学附属病院 脳神経外科):横浜市大本院では手術が安定しており、多くの術者を任されています。ピッツバーグに海外留学をする予定で、その壮行会も兼ねておりました。冷静沈着で、臨床のみならず研究の才も期待されつつ奮闘中。

最後に集合写真(‘ω’)ノ

 

認知症-保土ヶ谷区市民公開講座

保土ヶ谷区医師会主催の市民公開講座がありました。今回は、認知症がテーマで、「認知症になっても住み慣れた街で」と題して、保土ヶ谷区で認知症診療に携わる先生方とパネルディスカッションをいたしました。

前半:日暮の方から、認知症の一般的な事項について、広くやや深く講演をさせていただきました。講演内容は以下の内容です。
・認知症の種類とstage(正常~MCI~認知症)
治せる認知障害は治す=二次性認知症
・アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・高齢者てんかん
・介護保険サービスによる非薬物療法
家族など介護者のかかわり方:パーソンセンタードケア

後半:パネルディスカッション
進行:診療所スカイ 鈴木元晴先生
パネリスト:港北病院 山口哲顕先生・浅野医院 黒田理佐先生・ゆう在宅クリニック 三條博之先生 ほどがや脳神経外科クリニック 日暮雅一先生
【徘徊への対応】
・平穏に安全に過ごせることが大切で、その方法を模索する。病院との連携やグループホームの活用も検討
・徘徊の原因を探る 原因に合った対応を 徘徊を止める薬はないのでまずは薬ではなく対応を考慮する

【周囲が受診の必要性を感じていても本人が受診したがらない場合】
・機を待つことも必要
・在宅医の場合 認知症以外の体調不良な部分からアプローチして関係性を作る
・通院の場合 脳梗塞のチェックをしましょうなど認知症と言わず脳の健診と声掛けする
・在宅で訪問を拒否する場合 家族とよく相談して意向を確認しながら進めていく

【家族も本人も受診の必要性を感じてない場合】
・受診しなくてはいけないわけじゃないと肩の力を抜いて考えながら機を待つ

【介護者の気持ちのコントロールについて(つい怒ってしまう)】
・一生懸命介護しているからこそストレスがたまるので介護者を援助する体制が必要 (相談相手・デイやショートの利用など)
頑張りすぎない介護をめざす

【同じ食材を毎回購入し家に物があふれてしまう人への対応】
・介護サービスを活用し一緒に買い物したり片付けたりする
・なぜ買いたいのか原因を探る
・このような独居の人を地域がどこまで受け入れられるか その地域の環境にもよる

【車で迷子になり、免許返納させたいが本人が運転に拘っている どうすればいいか】
・免許証は本人のステータスなので返納を敗北ととらえる可能性あり 返納はしないけど車に乗らないとする
・運転は「卒業」と前向きにとらえる
・キーを回してもエンジンがかからない様に設定して、そのうちあきらめてもらう

【認知症になりにくい食べ物】
・運動と社会参加が大切
・地中海料理がおすすめ サプリは好みの問題 生活習慣病の予防が認知症予防につながる

【家族が薬を飲ませたがらない】
・命に関わらない薬は止めるよう調整可能

【デイやショートなど介護負担軽減のために計画するがデイ等に行ってる間心配でかえって休めない家族への対応】
・介護者が疲れていると良い介護ができない 自分のためではなく優しく介護するために一息ついて欲しいと伝える

直接意見交換ができ、とても有意義な会で多く勉強させていただきました。これからも保土ヶ谷区チーム医療で「中等度認知症の身寄りなし独居」をどこまでサポートできるか頑張ってまいりたいと思います。

参加者集合写真:左より、診療所スカイ/鈴木元晴先生 浅野医院/黒田理佐先生 私 港北病院/山口哲顕先生 ゆう在宅クリニック/三條博之先生 清水医院/清水哲平先生(今回の企画)。

エムガルティupdateー付加給付制度

日本イーライリリー株式会社主催 全国配信の第4回 Emgality Summer Web Seriesがありました。聖マリアンナ医科大学 内科学(脳神経内科)教授 秋山久尚先生より、「片頭痛患者の日常生活の支障はどう変わったか?~1 year CGRP Clinical Experience~」のご講演をいただきました。

エムガルティが発売されて1年4か月が経過しました。従来予防薬と比べ、毎日内服する煩雑性はなく、即効性と有効性はより期待できます、反復性片頭痛(慢性頭痛の治療ガイドライン2021では月3回の発作から使用可能)や慢性片頭痛・薬物乱用頭痛にはよい適応となります。片頭痛は少しずつ頻度が上昇することがあり、慢性化に至ってしまうと、頓用薬が効きにくくなってしまいます。また、その後の人生においても頭痛に煩わされる可能性が高くなります。そこで、頻度上昇している局面においてエムガルティを導入して軽減化を図ることは有効という考えがあります(early intervention)。受験・就職・転職などのライフイベントでストレスが増えたり、閉経・台風・コロナ感染/ワクチン接種などをきっかけに慢性化することがあるので、導入のタイミングとして検討するとよいかもしれません。Galcanezumab 120 or 240 mg given once monthly was efficacious, safe, and well tolerated.  (EVOLVE-2 Phase 3 RCT. Cephalalgia. 2018 Jul;38(8):1442-1454)

今年の6月から、在宅自己注射が可能となりました。こちらに関しては、自分で打つことに抵抗がなければメリットは多いかもしれません。3本まで処方ができるので、来院頻度を下げることができます。また、自身の医療保険の種類によりますが、以下に示した付加給付制度が得られる場合があります。

 

片頭痛克服に大切「我慢の楔」解放

第一三共株式会社主催 片頭痛治療 Frontier Web セミナーがありました。医療者間の勉強会は多いですが、一般の方々が視れないので、当ブログで私の感じた要点を啓発しています。今回はいつもお世話になっている横浜市内の同業先輩である、子安英樹先生と矢崎弘人先生座長のもと、小生から前座として当院における片頭痛診療の現況報告をさせていただきました。頭痛学師範 間中信也先生より、「頭痛診療のファーストステップ~片頭痛患者さんを我慢の楔から解放できるか~」の特別講演を拝聴させていただきました。

「我慢の楔」は間中先生の言葉で、片頭痛患者さんおよび頭痛治療医において十分理解することは治療成功のためにとても大切な概念です。片頭痛患者さんは、初期段階ではドラッグストアなどの頭痛市販薬でその都度対応していきます。全員ではありませんが、経過が長くなってくると頭痛薬内服頻度が増えて常態化しても違和感を感じなくなります。気づけば頭痛薬内服が日課となってしまいます(三叉神経・血管に火事が起きては消化してが毎日おこっている状態)。この状態は、自律神経系が非常に脆弱な状態となりますので、社会適応能力も低下します(踏ん張りがきかない 作業効率が悪くなる)。つまり、頭痛があることは当たり前と諦め、困難や課題へのチャレンジにも消極的になります。間中先生より拝受したスライドを以下に示します(このスライドは以前から気になっていた私にとっての宝スライドです)。

生き物は、あらゆる局面においてこのような「学習性無力感」が発生しやすいものと考えられます。この「拘束」という精神的諦めを見直して楔を解除することにより片頭痛からの自由自在を獲得することができるというわけです。

片頭痛患者さんは、ある時、対処不能な重度な片頭痛に襲われる、あるいはふと自分を客観視した時に、「これはまずい」と気づき、頭痛外来を受診します。そこで初めて頭痛克服のノウハウ(拘束解除のノウハウ)を知ることになります。急性期治療薬トリプタンやラスミジタン、発症抑制薬各種や抗CGRP関連抗体薬など。それにより、人生の見え方が変わり、困難へのチャレンジに対して積極的になっていくものと考えられます。