新しい片頭痛治療薬レイボー/エムガルティ

戸塚区医師会 日本イーライリリー株式会社 第一三共株式会社主催で、片頭痛フォーラムがありました。今回は東戸塚・戸塚と近隣の脳神経外科クリニックの先輩方座長のもと、前座として小生からCGRP薬の使用状況を報告させていただき、頭痛診療における日本の中枢のひとつである大阪の富永病院から、頭痛センター副センター長 團野大介先生より最新の頭痛診療エビデンスのご講演をいただきました。

以下、新たに提示されたポイントをいくつか紹介いたします。

レイボー(ラスミジタン)について:レイボーは痛いときにのむ頓用薬です。三叉神経終末のセロトニン5HT1F受容体を刺激してCGRPの分泌を抑制して頭痛を改善します。内服して30分から効果が出現し、2時間後に頭痛を消失させ、24時間と長い間効果が持続します。血液脳関門BBBを通過しやすいため、トリプタンと比べて内服するタイミングが遅れても効果を発揮します。朝起きて片頭痛が強度でも内服して改善する声を患者さんから耳にします。一方、ふらつき・ねむけ・めまいが発生しやすいため、初回から慣れるまでは、夕方から夜・休日にトライすることがすすめられます。これらの副作用は数回重ねることで慣れる傾向があります。体質にあってうまく使えれば大きな味方となりそうです。

昨年発売されたエムガルティ(ガルカネツマブ)を機に、大学病院など大きな病院でも「頭痛外来」が開設されはじめているようです。片頭痛の生活支障や経済損失の大きさが認識され、メディアでも取り上げられる機会が増えているようです。抗CGRP関連抗体薬は、約半数の患者さんで発作日数が半減、10-20%で完全に消失するケースがあります。特に、薬物乱用頭痛症例においてはよい適応となり、頓用薬の内服を我慢せずとも軽快していきます。頭痛が消失した症例で抗CGRP関連抗体薬を中断してもその後再発してこないケースもあります(卒薬)。注射で改善して定期継続している患者さんのうち10%弱は、初回効果が減弱するケースがありますが、投薬前に比べれば大きく改善しているようです。現在までのところ、当院でも169例に使用しており、その効果を多くの患者さんが享受されております。

旧「東海横浜strokeカンファランス」再来

大塚製薬主催 片頭痛診療のこれからを考える in 神奈川 がありました。頭痛に限らず、脳卒中・認知症などの幅広い神経内科疾患の日本のトップリーダーである橋本洋一郎先生に、熊本からWEB講演をいただきました。座長は横浜市内でご活躍されている脳神経外科の頭痛専門医の先生方でした。地域からの発信として小生から、アジョビ(フレマネズマブ)を中心に、抗CGRP関連薬の処方に必要な医師側のチェックポイントなどをお話させていただきました。

古市晋先生は、あざみ野駅前で開業されているとても穏やかな同業先輩です。田口博基先生ほか数名の脳外科開業医で医療や経営などに関する情報交換会を定期的にしておりましたが、コロナ禍でなかなかお会いできなかったので久しぶりにお会いできてよかったです。

橋本洋一郎先生とのなれそめは古く、小生が脳神経外科専門医になりたての31歳のころ、年間手術件数150件ある小田原市立病院で、医局人員不足で孤軍奮闘した辛い時期がありました。当時「東海横浜strokeカンファランス」という、橋本洋一郎先生と田口博基先生が立ち上げた脳卒中について語り合う会とご縁がありました。静岡・神奈川の脳卒中に携わる脳神経系の先生がたがあつまり、深夜まで飲んでた記憶があります。今回の小生の講演がおわり、橋本先生の特別講演の冒頭で、「久しぶりに日暮節が聞けて楽しかった。愚痴なくおちついちゃってるのがちょっとさびしかったですが、」という当時の自分を彷彿とさせる愛のあるコメントいただけたことがうれしいかったです(;’∀’)

橋本洋一郎先生からは、改めてご講演ご教授いただきました。田口先生と橋本先生の、座長演者掛け合いなども久しぶりに堪能させていただきました。田口先生は座長うまいなーと感服した次第です。さて、橋本先生から拝受したスライドの中でも、患者さんにも了解可能な内容をいくつか添付いたしました。地域医療はどうあるべきか、医療連携はどうあるべきか、新薬はどう扱うべきかなど、常に専門家同士で議論を重ね、前例・答えのない問題に取り組み、よりよい医療をみなさんに提供できるように精進をつづけています。

ヘンズツウかるた

日本イーライリリー株式会社 第一三共株式会社 主催で、片頭痛WEBセミナー in Kanagawaがありました。今年の第50回 日本頭痛学会総会 会長である 富士通クリニック 五十嵐久佳先生より、「片頭痛診療におけるチーム医療の重要性と構築のコツ~エムガルティの登場を機にチーム医療の重要性を再考する~」と題して、ご講演いただきました。

片頭痛患者さんは、健康寿命およびQOLは高度に阻害されていることが知られています(慢性頭痛GL2021 Grade A)。10歳~60歳においては、疾病負担の最も高い神経疾患が片頭痛です。片頭痛のために休むこともありabsentismと、出勤中の作業集中困難による支障度presentismもWPAI-Mスコアで高いことが示されています。子育て主婦や、家族余暇の阻害はつらいですよね。

慢性疾患のなかでも、生活習慣病は将来の卒中などに配慮して管理される一方で、片頭痛は怖い疾患を引き起こすことは少ないものの「今痛い」にフォーカスをあてて苦悩を取り去ることが治療の中心です。実際は、受診をしても適切な診断や管理をされず難民化してドクターショッピングを繰り返すかたが多くいるようです。頭痛外来を標榜していても、MRIとって異常なければ緊張型頭痛と診断してNSAIDSでフォローなしとする医療機関も多いと聞きます。五十嵐先生の初診データからは、実に男性の55.3% 女性の67.1%は片頭痛ありなのです。医師だけでなく、スタッフや薬剤師含め、頭痛診療に詳しくなって正確な診断・アドバイスを補完しあうことがチームとして診療の質を向上するうえで重要です。もちろん医師の基本姿勢としては、患者さんによりそい一緒に問題を解決していく姿勢が大切であると思いました。

記念撮影:患者さんをいつも診ている診察室で、WEBを通してきれいなお着物で登壇された五十嵐先生をお迎えして、情報交換や講演を聞けたのはとても貴重な時間でした。

CGRP関連抗体薬についてもお話いただきました。長く頭痛や周辺症状に悩まされていた患者さんは、頭痛が減るに加えスッキリするので逆にびっくりします。医師側としては、導入の際に、片頭痛の診断→支障度評価→治療ゴール設定とダイアリー確認と段取りを経る必要があります。また、頭痛医の対応の中で、患者さんの評価が高い項目は、「日常生活への影響を聞かれた」点が満足度が高いアンケート結果が示されました。

さらに、ヘンズツウかるたをお示しくださいました。片頭痛の複雑なあれこれをかるたで学ぶツールで、楽しく学べる、職場や学校でも楽しく理解できる斬新なツールと思います。待合に置きますので手に取ってみてください。また、ヘンズツウかるたの特設ホームページもございます。

https://www.henzutsu-karuta.jp/

アルツハイマー啓発フェス in 藤沢

アルツハイマーUKフェスが藤沢でありました。湘南エリアを中心に、認知症診療・啓発活動に注力している内門大丈先生主催で、当院も協賛させていただいております。今回のコンセプトは、「認知症の共生と予防について語り合う音楽フェス」で、認知症当事者や、福祉関係者・医療関係者が集い、音楽を聴きながら情報交換し、語り合う良い機会でした。認知症の患者さんたちも楽しく合唱し、その一生懸命さに感動しました。さくらコミュニティーケアサービス 代表取締役 稲田秀樹さんによるフォーク演奏。主催された内門先生。今回は、平塚に新規開業された、メモリーケアクリニック湘南の開業祝も時期的に含まれました。多くのわかりやすい本を書かれており、当院にもバイブルとして待合においてますので、是非お気軽に見てみてください。

東京慈恵会医科大学精神科主任教授 繁田雅弘先生からのコメント。平塚出身で日本の認知症診療を牽引するリーダーです。平塚の自宅を、認知症カフェとして改装し、栄寿庵として情報発信されています。また、メモリーケアクリニック湘南にもサポートに行かれております。開業したてで、じっくりスーパーエキスパートとお話しできる機会はそう長くはないので、ご興味あれば是非!最後に、内門先生作詞した「バースデー」をみなで合唱しました(^^♪

日々の暮らしの中で
君と出会い別れていくよ
ありきたりの日常が
とても大切だったと気づかない
人は生まれて
人と出会い別れていくよ
今日はとても大切な日
みんなの出会いを祝福したい
みんなが出会うバースデー
そして今日が大切だったと
この記憶をかみしめたい
いつか君と別れて
違う道へと進んでいても
大切な今日この日を
決して忘れることなどない
未来に向かうバースデー
そして今日が大切だったと
この記憶をかみしめたい
ララララ ララララ
ラララ ラララ ラララララ(2回)
人は生まれて
人との出会いで生きていけるよ

アジョビ(フレマネズマブ)Up to Date

大塚製薬主催 横浜脳神経外科研究会後援で、Headache Seminarが開催されました。頭痛診療において、昨年登場した抗CGRP関連製剤3剤の勉強会が多く、頭痛のアップが多くなっております。北久里浜脳神経外科院長の山下晃平先生オープニング、横浜市立大学脳神経外科教授 山本哲哉先生 総合司会、湘南鎌倉総合病院脳神経外科主任部長 権藤学司先生 クロージングで、アジョビ(フレマネズマブ)の実臨床における情報交換を行いました。

前座として、小生の方から「実臨床における頭痛診療のコツ~アジョビの使用経験も踏まえ~」と題して、当院で注意している診療や、経験した報告に関してお話させていただきました。片頭痛の年間有病率は8.4%といわれ、単純計算では横浜市には推定30万人の片頭痛患者がいると考えられます。当院では、開院5.5年目で、約5-6千人の片頭痛診断をうけた患者さんを拝見しております。多くはセルフケアですが、従来予防薬で定期通院の患者さんがいらっしゃいます。全体の2%の124例に、抗CGRP関連製剤を使用している現状です。高頻度反復性片頭痛や慢性片頭痛の患者さんは、1回でも大きく支障度が改善し、2回3回と重ねるうちにさらに改善が得られる傾向がみられました(下図)。続いて、3人の頭痛診療の専門家に、各テーマでパネルディスカッションをいただきました。

まず、脳外科頭痛専門医 堀田和子先生から、「誰にどのように紹介している」のご意見をいただけました。湘南鎌倉病院に頭痛サロンを形成し、ゆっくりコミュニケーションをするスタイルです。片頭痛の発作が5-10回の幅で、アジョビを提案しているとのことです。間中先生に手ほどきをうけており、アジョビによりcrystalclearの日常へ導いておられます。

続いて、小生の脳外クリニックの恩師であるたぐち脳神経クリニック院長 田口博基先生より、「いつまでうつの?」に関して、論文からひも解いていただきました。3-6か月は改善底をみるために継続したほうがよい。他剤へのスイッチ・期間延長・スポット使用もあり。中断して再増悪しても、再開でよくなるようです。また、コロナワクチン・感染や、気候変動に敏感なケースは、治療をうけていても増悪するようです。

最後に、同門先輩である、金沢文庫のこじま内科・脳神経外科クリニック院長 小嶋康弘先生より、「3剤あるけと何使う?」のご意見を伺いました。アジョビ・エムガルティを1stで使い、痛みや効果がいまいちな場合、アイモビーグへスイッチしているようです。アイモビーグはやはり痛くないのがポイントです。またクリニックでは、診療単価上昇が迫っており、在宅自己注射への移行もされているとのことです。super responder(ほぼ消失する症例)のケースも1年程度をめどに漸減しているとのことでした。

(会終了時の記念撮影 右より、山下先生 山本先生 堀田先生 私 小嶋先生 権藤先生 田口先生 ):oppo

最後に、小生の今回のスライドを提示します。参考にしていただけたら幸いです。(上段)アジョビ接種後のHIT6変化量(箱ひげ図)3回目までブースター効果がある。(中段)頭痛学会HPのE-lerning 頭痛の最新情報の内容が閲覧できます。施設名は、職場や「ほどがや脳神経外科クリニック」として閲覧できます。ご興味あれば是非。(下段)因縁の法則を頭痛診療でみてみました。良縁となる医師であるように努力をしないとと思います。(我慢の楔=間中信也先生の用語で、頭痛があることを常として我慢し続けるburdenを背負っている状態を当たり前とあきらめている状態)

アイモビーグ(エレヌマブ)患者さん目線の片頭痛治療 Up to Date

アムジェン株式会社主催の、アイモビーグ(エレヌマブ)患者さん目線の片頭痛治療 Up to Date がありました。アイモビーグは、昨年登場した3つのCGRP関連製剤の一つですが、他の2剤と異なり、CGRP受容体に対する抗体製剤です。注射時の痛みも少なく、のちのち在宅で使用可能となる予定の製剤です。

今回は、日本頭痛診療のスーパーエキスパートが多数集まり、全国の医師へM3配信される私なんかが話してよいのかと恐縮してしまう大きな会でした。とても貴重な会で20分の講演をさせていただきました。座長は、前半がテレビでも着物でおなじみの 富士通クリニック/東京クリニック頭痛外来の五十嵐久佳先生(日本頭痛学会理事)、後半が湘南慶育病院副院長/脳神経センター長 寺山靖夫先生(日本頭痛学会理事 教育関連委員会委員長)、クロージングが恩師 間中信也先生というラインナップでした。

冒頭の講演が、聖マリアンナ医科大学病院内科学(脳神経内科)教授 秋山久尚先生(日本頭痛学会代議員)という設定(*_*)。秋山先生からは、片頭痛の支障度が大きいことと、経済損失についてお話がありました。2005年の京都頭痛宣言にて、片頭痛に関わる日本の経済損失が2880億円と示されました。医療費に関わる直接経費+仕事支障に関わる間接経費に加え、金銭に代えがたい損失(家族団らんや余暇の支障)が示されました。

湘南鎌倉病院の堀田和子先生からは、「頭痛は愁訴ではなく疾患である」というお話が印象的でした。問診票だけでなく本人の所作や表現から診る、頭痛ダイアリーの赤ペン先生などのアイデアを教えていただきました。

えびな脳神経クリニックの岩田智則先生は、脳卒中の分野でもご高名な先生で、頭痛診療においては、支障度を客観視するHIT6 MIDAS MSQを大切にして診療していると伺い、当院でも参考にしたいと思いました。

私からは、いつもの頭痛診療5ステップと、アイモビーグの有効性、より多くの頭痛診療医がCGRP製剤を自信もって使えるように、特に脳神経外科キャリアパスで重視すべきであることなどをお話させていただきました。

(会終了時の記念撮影:私をのぞいた右から、五十嵐先生 間中先生 寺山先生 秋山先生 堀田先生 岩田先生)

4月を迎え代診人事の変更について

4月の人事の時期を迎え、当院の代診の先生方の一部変更があります。

●当医局から聖マリアンナ医科大学脳神経外科主任教授に就任された、村田英俊先生より、代診のサポートをいただけることとのなりました。5月から月1金曜日の午前または午後となります。詳細は、代診ページもしくは電話にてご確認ください。主にしびれ外来・脊椎脊髄外科を診ていただきたいと思っておりますが、開頭マイクロ手術全般的に安定した先生ですので、ご相談したいと思います。

●慈恵医大付属病院脳神経外科講師/脊椎脊髄センター長 大橋洋輝先生より、しびれ外来(脊椎脊髄末梢神経)サポートを頂けることとなりました。脳神経外科東横浜病院でも手術をされており、治療相談をさせていただきます。5月から月1回金曜日午前となります。詳細は、代診ページもしくは電話にてご確認ください。

●長く当院で、てんかん・ふるえ外来を担当していただけた、東島威史先生。このたび、横須賀うわまち病院での同領域立ち上げのため異動されました。市大センター病院の機能外科には定期的にサポートにこられるとのことで、脳神経外科領域で今後伸びていく領域の期待のホープです。また機会があればお願いしたいと思います。

●東島先生の枠(市大センター病院連携枠)は、新たに高木良介先生が来てくれることになりました。横浜市の脳神経外科領域において、水のトラブルに注力される先生や施設は限られます。高木先生は、水はけがわるくなる病気(正常圧水頭症+付随する認知症)と、水漏れが過ぎてしまう病気(低随液圧症候群=髄液減少症+付随する頭痛)に関して知恵をお借りしたいと思います。

●第2水曜日午後の大島聡人先生(引き続き火曜日午後)枠は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)でてんかん外科を修練された高山裕太郎先生が来ていただけます。市大ラグビー部の後輩でもあり、私が医局長のときに勧誘して入局してくれた先生で、池谷先生とともにてんかん診療・てんかん難民(適切な評価・治療をうけておらず漫然と古い抗てんかん薬を処方され続けている方々)を助けてもらいます。

●山本教授、佐藤充医局長(脊椎脊髄・頭蓋底内視鏡)、高瀬創先生(しびれ外来+次世代臨床研究)、山田幸子先生(もの忘れ外来+頭痛専門医修練中)、郭彰吾先生(脳卒中エキスパート+保土ヶ谷地区緊急相談)、大島聡人先生(大学院で脳腫瘍研究中+頭痛専門医修練中)には、引き続きサポートいただけます。

 

 

祝 村田英俊先生 聖マリアンナ医科大学脳神経外科 主任教授就任

横浜市立大学脳神経外科 准教授の村田英俊先生が、聖マリアンナ医科大学脳神経外科教室 主任教授に就任されました。当教室から他大学脳神経外科主任教授が誕生したのは、教室史上初でしてとても栄誉なことと思います。14人の錚々たる脳神経外科の実力者が犇めく教授戦を制するのはさぞかし大変だったと思います。異動前に壮行会が同門主催で開催されました。コロナ配慮のため飲食なしの静かな雰囲気の中、村田先生のビジョンを拝聴いたしました。

村田先生より拝受したスライドを 提示して紹介いたします。村田先生とは私が市大に入局してからのつきあいで、柔和でありながら動じず、常に余裕のある優しい頼りがいのある先輩です。上スライドに村田先生の執刀された手術件数がありますが、臨床能力はとても高く、手術件数も群を抜いています。幅広いサブスペシャリティーで求められ、安定した丁寧な手術をされます。

上スライドは、聖マリアンナ医科大学の主要施設です。聖マリアンナ医科大学脳神経外科教室と、横浜市立大学脳神経外科教室が協働することで、川崎・横浜・湘南の巨大エリア連携が可能となります。双方の医員にもよい連携ができ、臨床・研究において強力なパワーを発揮するのではないでしょうか。下図の黄色い部分が聖マリアンナ医科大学の中心エリアです。

先代の教授が他界された時期は減ったものの、横浜市立大学脳神経外科は、以前より全国でもトップクラスの入局者数を誇っています。両大学の多数の医局員×豊富な病院選択肢が提供されることになり、サブスペシャリティーの研鑽が活発化され、次世代のオピニオンリーダーが多く誕生することを願っています。

村田英俊新教授と。今後ともご指導いただきたく思います。

 

エムガルティ(ガルカネズマブ)Up to Date

日本イーライリリー株式会社主催のエムガルティ(ガルカネズマブ)エキスパートカンファレンスがありました。横浜市の脳神経外科診療における恩師である たぐち脳神経クリニック院長 田口博基先生座長にて、頭痛診療の師匠である 間中病院名誉院長 間中信也先生より、「頭痛診療のファーストステップ~片頭痛患者さんを我慢の楔から解放できるか~」と題してご講演いただきました。

エムガルティ(ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤)が本邦で発売されて来月で1年を迎えます。間中信也先生からのエムガルティ発売後の講演をいただけたのは個人的に初めてで、大変興味深い内容でした。まず、今回のポイントは、エムガルティはパラダイムシフト(常識の転換)をテーマに発売されましたが、それを転じて、片頭痛患者のパラダイスシフト(安楽への移行)のカギとなる製剤であるという点です。私も小児喘息もちでしたので、「この息苦しさがなければみんなよりサッカーもかけっこもうまくできるのに」などと悩ましい幼少期を送った記憶があります。β刺激薬吸入が開発され、そこで苦しくなった時に発作が止まる感動がありました(片頭痛でいえばトリプタン製剤に該当すると思います)。また、息苦しい時は物事に集中できずなおさら運動などでるはずもなく、仕方なしと踏ん張っておりましたが、ステロイド吸入薬が開発され、ほとんど発作がでなくなり、作業効率が高まった記憶があります(片頭痛でいえばまさに今回のエムガルティなどの抗CGRP関連製剤に該当すると思います)。

エムガルティは、使ってみないとわかりませんが、患者さんによっては、ほぼ消失~治癒したのではないかという方も20%いらっしゃいます。そこまででなくとも、発作はあるが市販薬やトリプタンで寝込まなくて済んだという方が多くいます。間中先生の「我慢の楔から解放できるか」は、頭痛があることが当たり前としてあきらめ、活動の下方修正仕方なしとしてしまっている方を解放したいという願いを感じます。そうでない場合は、緊張型頭痛や心因反応、その他の一次性頭痛、見逃されている二次性頭痛があるかどうか再検討が必要です。また従来予防薬や漢方も功を奏する患者さんも多いので、ハイブリッドで生活支障ゼロをめざすことも可能です。

(下写真:会終了時に記念撮影いたしました。田口先生のもっている「改訂2版 ねころんで読める頭痛学 診断と治療: アタマがイタい頭痛診療の悩みをドクター間中がすっきり解決!! 」間中先生の新書です)

私はディスカッション座長を担当いたしました。最近はろくに論文も書いてない一介の地域頭痛治療医にもかかわらずお声かけていただけてありがたく思います。

(ポイント1)CGRP製剤の効果が予測できるか??高価な薬だけに、CGRPの関与した頭痛(いわゆる片頭痛)かどうかを事前にわかるかどうか。緊張型頭痛~片頭痛までシームレスに多段階にCGRPが関与するというお話もあります。これからの研究課題と思います。

(ポイント2)「見えない頭痛支障の見える化」元祖定量ツールは頭痛ダイアリーです。当院では私がつかみ切れていない頭痛の患者さんには勧めています。ただし、記入や解析は労があることもあります。そこでHIT6という、受診時点での支障度評価ツールがあります。こちらは、当院では初診、抗CGRP製剤導入・フォロー時は必須としておりますが、患者さん側からみても「私の頭痛って、こんなにわるいの?」「よくなってるじゃない」などの簡易なチェッカーになっている印象があります。

(ポイント3)「しゃべる絵本」今後普及していくと思いますが、平易な言葉とシンプルな動画で片頭痛の病態とエムガルティの及ぼす効果が短時間で理解できる内容となっています。当院でも本会事前に数人にみてもらいました。今後、パンフレットに組み込む・頭痛外来HPにリンクをはるなどのシステムができるとより拡散(啓発)されることと思います。

新規の片頭痛抗体治療薬アジョビ(フレマネズマブ)とは

大塚製薬主催、保土ヶ谷区医師会協賛で、「片頭痛診療について考える会」がありました。私は久しぶりに40分の長い講演を担当させていただき、脳神経外科東横浜病院 副院長 郭彰吾先生に座長していただきました。Session2として、横浜エリアで活躍されている脳神経外科・神経内科医の先生を中心に、アジョビ(フレマネズマブ)の活用方法につき議論いただきました。アジョビは昨年本邦で発売された抗CGRP抗体治療薬です。片頭痛の発生メカニズムに関与するCGRPをキャッチして失活する薬です。私からの 講演としては、当院では約30例のアジョビを使用しており、従来発症抑制薬に加えて、あるいは入れ替えて使用し、1か月あたりの頭痛日数・トリプタンなどの薬使用回数・HIT6というQOLスケールの改善が得られています。やや高額な薬ですが、試す価値はあるかと思います。約20%の方はsuper responderといわれる、頭痛がほぼゼロになる著効例がおりますが、使用してみないとわかりません。

また、どういうときに必要かという議論においては、頭痛頻度上昇しており、休職リスクや大きなプロジェクトをかかえている、受験を控えているなどのどうにもならない状況においてはコスパはよいと思います。また、ストレスの多い休めない仕事についている方の片頭痛重積や頻度上昇時にも従来予防薬で不十分な場合に効果的かと思います。処方する側としては、保険から多くの公費を使うお薬だけに、必要十分な量を模索し、軽減しているシーズンはオフにするなどのアイデアが必要であると感じました。一方、片頭痛の患者さんには、いざというときはアジョビがあるということを念頭におき、マネジメントしていただけたらと思います。右から、子安脳神経外科クリニック院長 子安英樹先生、脳神経外科東横浜病院副院長 郭彰吾先生、左から、ポートサイドプレイス中崎クリニック院長 中崎浩道先生、碧水脳神経クリニック院長 増田励先生(頭痛学会評議員)です。頭痛を診療する各医療機関の経営者としての視点から、新しい抗体治療薬の扱い方、初回投与のタイミング・継続・中断、スポット利用、使用できる年齢や挙児希望者との絡みなど、多くの意見をいただきました。特に、高校受験生や大学受験生に関しては、安全性は18歳以上で確認済であるが、15歳から投与可能との大塚側からの回答を得たことで、該当する患者さんは大きな恩恵を得られるのではないでしょうか。ご興味のある患者さんは、是非お気軽にご相談ください。