レビー小体病とは

横浜市立大学神経内科医局長 上木英人先生のレビー小体病に関する講演がありました。上木先生は、市大同窓生で、20年以上の付き合いです。当院の診療においても、いろいろ相談に乗っていただいています。
レビー小体病は、αシヌクレインという蛋白質が神経細胞にたまっていく病気です。たまる神経によって、パーキンソン病やレビー小体型認知症や純粋自律神経不全(pure autonomic failure)を発症します。同じαシヌクレインがたまる病気で、多系統萎縮症もあります。ふるえや歩行障害などの運動障害だけでなく、幻視や自律神経失調症など多彩な症状の原因となります。上木先生はじめ市大神経内科の専門家と連携しながら、最新の治療を提供していきたいと思います。

介護者を守る(レスパイトケア)

三ツ境にある神奈川病院・あさひの丘病院を統括する、誠心会理事長 佐伯隆史先生と連携会をしました。佐伯先生とは、オーストラリア留学を共にした縁があります。その時お世話になった、メルボルンのGP(日本でのかかりつけ医)Collins Street Medical Center院長 Tiarni先生も来ていただきました。

認知症診療において、急に幻覚妄想状態となる「せん妄」は注意が必要です。認知症や脳卒中などで脳に傷がついていると、環境変化や脱水やかぜなどの身体変化により、「せん妄」は発生しやすくなります。興奮・介護抵抗などの陽性症状中心のものだけでなく、ぼーっとする陰性症状もあります。特に、陽性症状に傾く「せん妄」は、居宅で見ていくのには限界があり、しばしば精神科に緊急入院が必要となります。患者さん自らの安全のためもありますが、介護者が手に負えなくなり入院せざるをえなくなります。しかし、日中入院先を探すのはとても難しいのが現状です。佐伯先生には、私個人のヘルプ要請に応じて患者さんを引き受けていただき、とても助かっています。私だけでなく、介護者も安堵されます。「せん妄」は治療すればもとに戻るので、疑わしい場合はまずはご相談ください。

「せん妄」以外でも、介護者負担を軽減する手段は多くあります。レスパイトケアと呼ばれており、認知症家族の管理に行き詰っている介護者の方は、是非ご相談ください。

また、日豪関係はますます親密になっており、会社の出張や、オーストラリアから日本への赴任などの数も増加しています。Tiarni先生は、オーストラリアの主要都市の日本人GPとのつながりが強く、国境を越えての連携を構築中です。英語の診療や、オーストラリアへの赴任などでご心配がある場合は、是非ご相談ください。

常に一流を目指して

新都市脳神経外科病院院長、森本将史先生と連携会がありました。森本先生率いる新都市脳神経外科病院は、脳卒中治療件数神奈川県1位です(全国9位)。私が医局長のとき、森本先生が京都大学から新都市に赴任し、横浜市大の関連施設として学会に登録しました。手術とカテーテル、両刀を目指す脳卒中外科医の注目を集めています。

脳卒中急性期医療において、心房細動による脳塞栓や、脳動脈の急性閉塞は、大きな後遺症を残す点から、できるだけ被害を小さくしたいところです。tPAは「魔法の薬」として脳卒中救急で重要な位置を占めますが、再開通率は思いのほか低いのが現状です。またembolectomyという直接開頭して血栓を取りに行くのも、工程数が多く侵襲もあります。そういう観点から、カテーテルで直接血栓を回収に行くほうが、低侵襲でスピーディーといえます。当院から新都市は救急車では30分以内で行けます。また、血栓回収は発症から8時間くらいまでは効果が期待できますので、適応症例があれば、是非相談したいと思います。

ほかにも森本先生のお話で、感銘を受けたのは、常に一流を目指し続ける、世界を意識するという心構えです。横浜市大で指導いただいた故 川原信隆教授も同じ意識をもっていました。私のような愚輩には到底ない意識ですが、横浜の中心に近いところで開業している身として、目指していきたい姿勢です。森本先生は、京大時代、夏はラグビー冬はアルペンスキー部で奮闘していたと伺い、私とまったく一緒の選択だということも驚きました。密な連携をして、患者さん第一を胸に、質の高い医療を提供していきたいと思いました。

横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科

横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科(市大福浦)の面々と情報交換会がありました。村田講師・末永講師とその仲間たちです。新教授就任を控え、変化の大きい大変な時期と思われます。「教育」「臨床」「研究」の3本柱の維持向上を目指し奮闘しています。市大センター病院や基幹病院、同門開業医が一体となって更なる飛躍を目指したいです。

「和顔愛語」「傾聴」

書家の中澤瓈光先生から、「和顔愛語」「傾聴」をいただきました。和顔と愛語は、仏教用語で「無財の七施」のうちの2つです。社会をマイルドにする効果があります。傾聴も仏教でよく用い、「観世音」といったところでしょうか。ひと様の苦悩に耳を傾け、適切な対応を目指す姿勢です。特に、認知症ケアでは重要です。スタッフ一同暖かく患者さんを迎え、よく話を聞いていきたいと思います。

頭痛フォーラム2017

エーザイ主催、日本頭痛学会後援「頭痛フォーラム2017」がありました。トリプタンの使い分け、二次性頭痛の中でも見落とされがちのRCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)、頭痛体操のメカニズムと実践など魅力的な内容でした。

私の頭痛専門医指導者である間中信也先生(温知会間中病院院長)に、当クリニック開設後初めてご挨拶できました。「頭痛外来どんな感じ?」と訊ねられ、子供の頭痛患者さんも多いことを伝えると、「寄り添っていってあげてね」など、フォローのポイントをいくつかいただきました。常に柔和な姿勢で、人間力も勉強になります。

また、埼玉医大の理学療法士さんから、「正しい」頭痛体操を実践しました。2分は以外に長く、しっかりやると頸肩がかなり軽くなると改めて実感しました。

車の運転と認知症

神奈川県医師会で、「認知症にかかわる診断書提出命令制度」に関する会がありました。今年の3月12日から施行される改正道路交通法についてです。

車の運転と認知症には、様々な問題があります。脳卒中や高齢発症てんかん同様、認知症も交通事故の大きな原因です。高速道路や一方通行を逆走したり、歩道の人をひいてしまったり、歩道につっこんでしまう。ニュースでもよくみかけます。2025年に向け、人口当たりのこれらの有病率も高まるため、法整備をすることは大切と思います。一方、人生終盤にかけて仕事や仲間など失うものが多い時期であり、車が好きだった方にとっては大きな喪失体験となることにも配慮する必要があります。古来より、人間は老いるとともに人格が高まっていくイメージですが、年々長寿記録が塗り替えられる昨今、医学生理学的にも精神機能や高次機能を維持する伝達物質は減少するのでそうとも言えなくなっています。突然の大切なものの喪失や、連続する喪失体験は、精神疾患の原因となったり、かっとして事件を引き起こしてしまうリスクがあります。嗜好の転換や、徐々に車の運転から離れるように、早めから時間をかけて調整する必要があります。

認知症の種類は様々あり、こういったケアの方法も疾患ごとに異なります。そういった視点からも、早期の正確な診断が必要です。

レビー小体やアルツハイマーのように視空間認知にかかわる部分が脱落する場合は、車庫入れがうまくできなくなったり、すったりするでしょう。血管性認知症などの皮質下性認知症の場合は、注意散漫になり、周囲の変化に反応する時間が遅くなることから事故につながるでしょう。ご家族が気づいてあげることも大事です。特に、短期記憶障害(同じことを繰り返し質問する)が初期に出にくいレビー小体型認知症には注意が必要と考えます。

実際認知症の治療にあたっていて、「運転をやめさせたいけど怒ってしまうので、、」というご家族や、アリセプトやメマリーなど内服している患者さんが陰で運転してしまうなど、問題はさまざまです。抗認知症薬を内服している場合は運転してはいけないのですが、管理はとても難しいのが現状です。

脳(こころ)の漢方

頭痛やめまい、認知症の周辺症状の治療において、漢方は重要な役割を担っています。新横浜のかえるメンタルクリニック院長、陶山亨先生のこころの漢方講演がありました。個人的には、陶山先生はスーパーベーシストとしての印象が強く、横浜市大学生時代に一緒にライブをしたりしました。久しぶりにお会いし、講演を聞いて、精神領域における漢方治療のエキスパートとしても改めて感銘をうけました。頭痛やめまいなどの身体的不定愁訴は、背景に不安・不眠・焦燥・抑うつなどの精神症状を伴っていることが多く認められます。特に頭痛の有病率の高い女性においては、背景に生理周期による変動や更年期障害の影響もあります。このような多彩な不定愁訴に対しては、向精神薬よりも漢方が著効するケースが多くあります。陶山先生の話を伺い、効果的な処方の背景には、じっくり患者さんの話を聞き、何が起こっているかを見極め、十人十色のテーラーメイド処方があると感じました。改めて、「傾聴」を実践しなくてはと思いました。

神経原線維変化型老年期認知症(ちょっと難しい内容です)

ブレインバンクの河上緒先生の、神経原線維変化型老年期認知症の神経病理に関する講演と、平塚地区精神科の先生方とのディスカッションがありました。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβの蓄積(老人斑)と過剰リン酸化タウ凝集による神経脱落(神経原線維変化)が病因とされています。海馬傍回の嗅内皮質から始まり、大脳新皮質に年の単位で進行し、新皮質の機能を次々と傷害し、発症から10年程度で死亡します(図 Braak et al, 1995)。しかし、類似の病理像を呈する疾患がいくつかあります。そのうちのひとつが、高齢者タウオパチーのひとつ、神経原線維変化型老年期認知症です。これは、アルツハイマーと似たような、短期記憶障害と怒りっぽいなどの性格変化で始まります。妄想も多く認められることが特徴です。MRIでも、海馬傍回から海馬の萎縮を呈することからVSRADに異常がでるため、アルツハイマー型認知症と誤診されているケースが多いように思います。ブレインバンクの剖検例をみても、生前にアルツハイマー型認知症などほかの疾患と診断されていて、死後病理で神経原線維変化型認知症であったというケースも多いようです。

問題は、VSRADとamnestic MCIのみでアルツハイマー型認知症と診断し、安易にアリセプトなどのコリンエステラーゼ阻害薬を使用することで、易怒性などの陽性症状が悪くなる可能性があることです。80歳以上の高齢者で、緩徐進行性の短期記憶障害の場合、生活機能障害がなければ(FAST3)、易怒性などの情緒障害をターゲットとした気分安定薬や抗精神病薬などで進行するかどうか経過をみていくことが重要であると思われました。基幹病院で脳血流SPECTを行い、頭頂葉や楔前部血流低下を確認することも必要と思われます。

迂回回から左右差をもって萎縮する嗜銀顆粒性認知症も、似た問題を抱えており、VSRADだけでなく、海馬冠状断で、どこがどのくらい萎縮しているのかをよく見て、アルツハイマー型認知症でない可能性があると常に疑いながら注意深く処方することが大切であると考えます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25348064

歩いて来るくも膜下出血

くも膜下出血というと、命に関わる救急疾患というイメージがあると思います。確かに多くは「経験したことのない頭痛」「バットで殴られたような頭痛」で、救急搬送されます。しかし中には、軽い頭痛やめまいだけの場合もあります。
「朝から頭痛はあったけど仕事休めないから」といって夕方に来院されたバスの運転手さんや、「1週間前に家の掃除をしていたら頭痛がした。痛み止めで様子を見てよくなったけど念のため。」と、1週間後に来た主婦などで、くも膜下出血の診断をした例があります。この仕事をしているとときどき遭遇します。写真はその1例で、右側頭葉先端にわずかにくも膜下出血を認めます。
一般的に、くも膜下出血になると、1/3は死亡・1/3は後遺障害・1/3は元の生活に戻る、といわれます。ただし、2回目の出血(再出血)をおこしてしまうと、7割の方が亡くなります。
家族歴がある方や、持続するいつもと違う頭痛がある場合は、動脈瘤や血管解離の有無と、くも膜下出血の痕跡のチェックをお勧めします。