物忘れ外来の担当医
- 日暮医師
- 山田医師
- 池谷医師
- 高木医師
※初期検査はすべての医師で対応可能です
物忘れとは
物忘れとは、記憶の「情報を覚えること(記銘)」「情報を保存しておくこと(保持)」「情報を思い出すこと(想起)」のうち、一度覚えた内容を思い出せないこと(想起の障害)を指します。物忘れというと、老化に伴う生理的な記銘力障害(情報を覚えることができない)と、病的な「認知症」の2つを意味することがあります。その日の朝ごはんの内容を思い出せないといったものは老化による記銘力低下だと考えられますが、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるようだと病的であると言えるかもしれません。病的な物忘れ(認知症)で最も多いアルツハイマー病では、日常の出来事や思い出の記憶であるエピソード記憶(いつ、どこで、なにが起こった)が初期から障害されるとされています。一方で初期では、記銘力障害はあまり強くは起こりません。注意力や遂行能力障害が目立つレビー小体型認知症などの認知症もあります。
認知症について
認知症になると、記憶や見当識(日時や場所などの状況を把握する能力)、言語、認識、計算、思考、意欲、判断力などの多用な脳の認知機能が持続的に障害されるため、仕事でミスが増えたり、食事を作れなくなる、金銭管理ができなくなるなど、日常生活や社会生活に支障をきたします。また、脳の機能が以前よりも低下しているものの日常生活は送れる状態を軽度認知症と呼びます。認知症には、不安やうつ症状、幻覚、妄想、不眠、興奮などの行動・心理症状を伴うことがあります。認知症には、最も発症の多いアルツハイマー病や血管性認知症、レビー小体型認知症、高齢者タウオパチーなど多数の種類があります。また、認知症に似た症状を示す疾患として、せん妄やうつ病などの精神疾患があります。認知症の症状は、認知症を起こしている原因疾患にもより、記憶障害がほとんどないものもあります。
加齢による物忘れと認知症による物忘れの違い
加齢による物忘れ
加齢によって記憶力が低下し、物忘れを起こすことがあります。病的な物忘れとは異なり、指摘されることで、忘れていたことを思い出せるという特徴があります。進行のスピードは非常に緩やかであり、訓練などによってある程度進行を抑えることができます。
加齢による物忘れの特徴
- 物忘れが多いことを自覚している
- 出来事や体験は覚えているが、詳細を忘れている
- 習慣的に行っていたことは行えるため、日常生活に支障はない
- 状況に適切であるかの判断ができる
認知症による物忘れ
認知症による物忘れの特徴は、出来事や体験そのものを忘れてしまうことです。また、記憶力だけでなく、理解や思考・学習・計算・判断・言語などの認知機能が低下します。指摘されても、忘れていることを思い出せない場合は、認知症の可能性があります。なお、認知症を引き起こす疾患には、根治が難しい認知症と根治が可能な認知症があります。
認知症による物忘れの特徴
- 物忘れが多いことを自覚できない
- 出来事や体験自体を忘れている
- 習慣的に行っていたことができなくなり、日常生活に支障をきたしている
- 状況に適切であるかどうかの判断ができない
せん妄とは
せん妄とは、意識がもうろうとする、注意が散漫である、時間や場所がわからない、幻覚・錯乱、興奮などの症状が突然発生し、症状が激しく変動する状態です。意識が混濁するため、その間の記憶は障害されています。せん妄は肺炎など体になんらかの負担がかかったことがきっかけで起こります。治療では、せん妄の原因となっている疾患の治療を行い、それでも症状が続く場合は、幻覚や興奮に対する薬物療法を行います。高齢者がある日突然「いない人の姿が見える」と言って騒いだり、つじつまの合わないことを言う、興奮して夜も眠らないなどの症状が起こった場合は、せん妄の可能性があります。せん妄は体の疾患が原因である可能性が高いため、早急な検査が必要です。
このような症状がありましたらご相談ください
以下のような症状が目立つようになってきたら、認知症の初期症状である可能性があります。周囲から以下のような症状を指摘される場合は、一度専門家の検査を受けましょう。また、症状に気づいたご家族などの周囲の人は、感情的にならないように配慮しながら受診を勧めましょう。
- 人や物の名前が思い出せない
- 物を置き忘れる、物をしまい忘れる
- やりかけのまま物事を放置する
- 一度聞いたことを何度も繰り返し聞く
- 食事をしたことを忘れる
- 慣れた道であるのに、帰り道がわからなくなる
- すぐに怒る、落ち込む、はしゃぐ
- 何事に関しても意欲が薄くなる
- 適切な判断ができなくなる
物忘れ外来の流れ
1問診・神経学的診察
初診時には、どのようなタイミングで物忘れが起こるのか、患者様のお悩みはどのようなことか、詳しくお伺いします。患者様の症状・お悩みだけでなく、より客観的な評価を行うために、本人だけでなくご家族も同席していただくことを推奨しています。
※患者様には言いづらいこともあるかと思いますので、その場合には別室にてお伺いすることも可能です。何かございましたら遠慮なくお申し付けください。
また、状況をお伺いするとともに、現在服用している薬や病歴など、認知症の原因となるものがないかお伺いします。必要に応じて、問診とともに、失行や歩行異常がないか確認します。
2MRI検査・血液検査
物忘れの原因となる脳疾患や甲状腺機能低下症などの内分泌異常、代謝異常がないか、必要に応じてMRI検査や血液検査を行い、確認します。
なお、発作的に物忘れが生じる場合、てんかんの疑いもあります。てんかんが疑われる場合は、脳波検査等の実施が可能な医療機関、またてんかん専門医をご紹介します。
3神経心理検査
物忘れ症状がある場合、「長谷川式知能評価スケール」等、数種類の神経心理検査を行います。
※検査内容としては、複数の言葉の記憶、時間をおいて思い出すことができるか、集中力の継続などを確認していきます。
4(必要に応じて)2回目の神経心理検査
必要に応じて神経心理検査を2回行う場合もあります。これは、1回目と2回目の検査データが異なることもあるからです。特に、1回目の検査(初めての検査)は、誰でも緊張し、検査データが適切に現れないこともあります。
必要に応じて検査スタッフ、医師がご案内しますので、2回目の検査を提案されましたら、リラックスした状態で、再度検査をお願いします。
5診断・治療
物忘れが認知症によるものと診断されましたら、医師と患者様、ご家族にて今後の治療方針を決めていきます。認知症ではなく、精神疾患によるものと考えられる場合、適切な精神科・心療内科をご紹介します。また、物忘れの原因が何らかの疾患によるもの、疾患の手術等が必要な場合には、より高度な治療ができる連携医療機関をご紹介します。
当院では、患者様を支える家族のケアにも力を入れています。包括的なサポートを行っていきますので、安心してご相談ください。