TOPへTOPへ

頭痛の薬

「頭痛薬」と「片頭痛治療薬」

NSAIDs

NSAIDsとは、非ステロイド系の解熱鎮痛剤の総称です。NSAIDsは市販されているものが多く、バファリンやイブ、ロキソニン、ブルフェン、ボルタレン、カロナール、セレコックスなどがあります。カロナールは厳密にはNSAIDsではなく、副作用が少ないため比較的安全であるとされています。巷では、解熱鎮痛剤の鎮痛作用の強さのランキングのようなものが多くありますが、解熱鎮痛剤の効き目は個人差があるため、ご自身に合うものを探しましょう。世の中のすべての痛み止めは基本的にNSAIDsですが、片頭痛には効果が無かったり、緊張性頭痛にもあまり効果がないため頭痛が起きたときの一時しのぎとして使用し、過大な期待はしない方が良いでしょう。

片頭痛治療薬

現在は片頭痛の治療には頭痛薬を用いないのが一般的になってきました。片頭痛の治療には、片頭痛専用の「予防薬」と「急性期治療薬」を用います。

予防薬

毎日あるいは月に1回の使用で、片頭痛を予防できる予防薬があります。片頭痛は繰り返すほど、片頭痛を起こしやすい体質になってしまうことがわかっており、片頭痛が起こる度に脳に傷がつき、脳梗塞や認知機能のリスクが上がるため、片頭痛が起こる回数を減らす治療を行うことが重要です。予防薬の導入では、片頭痛の回数の把握や治療目標の設定、予防薬の種類の理解とそれぞれの予防薬の効果の判定、予防薬の副作用の早期発見とリカバーが必要です。現在の基準では、月に4回以上の片頭痛がある場合に予防薬を導入、追加、増量し、月に2回程度の頻度まで抑えることを目標としています。予防薬は「中枢に作用するもの」「末梢に作用するもの」「痛み中枢に作用するもの」の3種類に分けられます。

片頭痛の予防注射

中枢(脳そのもの)に作用するもの

片頭痛の発生源である大脳皮質に働きかける薬です。

  • 抗てんかん薬(パルプロ酸「デパケン・セレニカ」、トピラマート「トピナ」)
  • Ca拮抗薬(塩酸ロメリジン「ミグシス」など)
  • β遮断薬(プロプラノロール「インデラル」など)
末梢(脳の外)に作用するもの

三叉神経と血管のつなぎ目(神経血管接合部)に働きかけて、CGRPの影響を取り除く薬です。

  • CGRP関連製剤(「エムガルディ」「アジョビ」「アイモビーグ」)
痛みの中枢に作用するもの

脳の中の痛覚の中枢に働きかけ、痛みの感じやすさを抑える薬です。頭痛がない日が1日もない場合や薬物乱用頭痛の原因薬剤からの離脱の場合に使用します。

  • アミトリプチリン「トリプタノール」

急性期治療薬「レスキュー」(トリプタン、ラスミジタン)

急性期治療薬は、片頭痛発作の開始時に頓服として用いる薬で、トリプタン・ジタン製剤を指します。片頭痛以外の頭痛には効果がありません。トリプタンが5種、ジタンが1種で、薬剤によって効果が現れるまでの時間や持続時間、副作用の感じ方に違いがあります。主な副作用として、眠気やめまい、ふらつき、脱力、胸の苦しさなどがあります。片麻痺性片頭痛の場合や脳血管障害、冠動脈疾患を持っている場合は、トリプタンが禁忌となるため、ジタンを用います。薬剤は発作のタイプや飲むときの状況などを考慮し、医師と一緒にご自身に合った薬剤を見つけます。2,3種類のトリプタン・ジタンを状況によって使い分ける方も多くいます。

スマトリプタン(イミグラン)

スマトリプタンとは、最も古くからあるトリプタンで、内服、点鼻、注射の3種類の投与方法があります。内服は30分、点鼻は15分、自己注射は5~10分で効果が出るとされており、2時間程度で効果は切れます。1回1~2錠となります。

リザトリプタン(マクサルト)

リザトリプタンとは、最も早く効果が現れるトリプタンで、水なしで服用可能なお薬です。1回1錠となります。

エレトリプタン(レルパックス)

エレトリプタンとは、スマトリプタンやリザトリプタンよりも副作用が比較的少ないとされているトリプタンです。1回1~2錠となります。

ゾルミトリプタン(ゾーミック)

ゾルミトリプタンとは、効果が現れるまで少し時間がかかるが、効果が長く持続するトリプタンです。水なしで服用可能です。1回1~2錠となります。

ナラトリプタン(アマージ)

ナラトリプタンとは、ゆっくりと穏やかに効き、持続時間が長いトリプタンです、月経時の片頭痛をターゲットに、NSAIDsと併用する服用方法があります。1回1錠となります。

ラスミジタン(レイボー)

ラスミジタンとは、ジタン系の薬で、トリプタンの次世代型であると期待されています。ラスミジタンの使用方法はトリプタンと似ていますが、頭痛発症後1時間が経過してから内服しても頭痛が改善されることが報告されており、トリプタンよりも服用が簡単であると考えられています。また、ラスミジタンは血管収縮作用がないため、脳血管障害がある方や片麻痺性片頭痛の方にも使用することができます。日本では、2022年1月20日に片頭痛治療薬「レイボー錠50mg/レイボー錠100mg(ラスミジタンコハク酸塩)」の国内製造販売が承認され、2022年4月20日に薬価が定められました(標準量100mg錠:1錠あたり570.9円=保険3割負担で171円)。但し、初回内服の際は、ねむけ・ふらつきがでても大丈夫な眠前や休日にしたほうがよいでしょう。短期間で使い続けることで副作用が低減されていることも示されています。


不眠の薬

ベンゾジアゼピンについて

ベンゾジアゼピンとは、睡眠作用や抗不安作用、筋弛緩作用をもつ物質で、それぞれのどの作用を強調するかによってさまざまな薬が開発されています。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は現在、旧来の睡眠薬に置き換わりスタンダードな睡眠薬となっています。ベンゾジアゼピン以前の睡眠薬は、多量に服用すると死に至るような危険なものでしたが、ベンゾジアゼピンが現れたことで、睡眠薬は多量に内服したとしても死に至るようなことはなく、極めて安全と言えるものになりました。しかし、ベンゾジアゼピンには依存性があり、ある程度内服すると神経が慣れてしまい、耐性がついたり、意識障害やふらつきのような副作用が現れることが近年問題になっています。すでに海外では、ベンゾジアゼピンの規制が厳しくなっており、今後日本でも処方制限が厳しくなることが予想されます。そのため近年では、ベンゾジアゼピンに置き換わる新たな睡眠系の薬が発売されるようになりました。

ベンゾジアゼピンに代わると期待される薬

マイスリー

マイスリーとは、非ベンゾジアゼピンの睡眠薬で、睡眠作用以外の効果がほとんどないことから、一気に広まりました。しかし、効果は短期集中的で2時間程度で効果が切れる(血中半減期が2時間)ため、離脱症状として、「反跳性不眠」(突然服用を中止すると服用前より不眠症状が強くなる)が現れやすいとされています。

ルネスタ

ルネスタとは、アモバンという薬の改良薬で、非ベンゾジアゼピンの睡眠薬です。効果はマイスリーよりは穏やかですが、マイスリーと同様に離脱症状があるとされています。また、内服後翌日まで残るような苦みがあることが特徴です。

デエビゴ

デエビゴは、不眠症治療薬の一種で、オレキシン受容体拮抗薬として作用し、脳内の覚醒を維持するオレキシンという神経伝達物質の働きを抑えることで、自然な眠りを誘導します。
睡眠開始困難や睡眠維持困難を改善する効果があり、従来の睡眠薬に比べて、翌朝の眠気や依存性が少ないとされています。

ベルソムラ

ベルソムラとは、非ベンゾジアゼピンの睡眠薬でオレキシン受容体を阻害することで眠気を催す薬です。うとうとするような自然な眠気を起こし、血中半減期が10時間であることから比較的長く効果が持続する睡眠薬です。悪夢や翌日まで眠気が残るといった副作用があります。2014年発売の薬です。

ロゼレム

ロゼレムは、非ベンゾジアゼピンの睡眠薬で、脳内のメラトニン(睡眠リズムを調整している松果体ホルモン)の受容体に作用することで睡眠を促す睡眠薬です。直接的に睡眠を導入する働きは強くなく、数週間かけて眠りの状態を調整していきます。


薬の使い方から分類する頭痛

頭痛の原因となる病気

頭蓋骨の外に合って頭痛の原因となるのは、皮膚や皮膚の神経、血管、筋肉です。これらが原因となって起こる頭痛と、それらの治療に用いられる代表的な薬をまとめると以下のようになります。

部位別、頭痛に効く薬

痛い箇所 病気 代表的な薬 商品名
皮膚 帯状疱疹 抗ウイルス薬、神経障害性疼痛治療薬 アメナリーフ、バルトレックス
皮膚の神経 後頭神経痛 神経障害性疼痛治療薬 (リリカ、ガパペン)
血管 片頭痛、群発頭痛 片頭痛治療薬、血管拡張薬 トリプタン製剤、レイボー
筋肉 緊張型頭痛 NSAIDs、筋弛緩薬 ロキソニン、イヴ、テルネリン
頭蓋骨の中 髄膜炎、脳腫瘍、くも膜下出血 緊急での精密検査が必要です

※NSAIDs:非ステロイド性消炎鎮痛剤の総称


頭痛について理解を深めましょう

疾患の診断や薬の種類・量の選択は医師の仕事ですが、ご自身でどこがなぜ痛いのかを理解することで、不必要な内服を減らすことができます。また、不安の改善にもつながるため、ご自身で頭痛についての理解を深めましょう。ご不明点や疑問点はご遠慮なくお尋ねください。