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キアリ奇形(脊髄空洞症)

キアリ奇形(脊髄空洞症)とは

脊髄の中に水が溜まり、脊髄がまるで「ちくわ」のような形になってしまう疾患を脊髄空洞症といいます。多くの場合この疾患の原因は、生まれつき後頭部の奥にある小脳が脊髄の下に落ち込んでいることで、この状態はキアリ奇形とも呼ばれています。その他、脊髄損傷や、脳脊髄を癒着させるような病気や脊髄内腫瘍も原因になることがあります。
空洞ができてしまうのは、脳と脊髄を循環している脳脊髄液の流れが滞るためだと言われています。脊髄は脳の命令を全身に伝達する神経線維が集まったものなので、ここに空洞ができてしまうと、感覚障害や運動麻痺を引き起こします。

キアリ奇形とは

キアリ奇形とは、小脳や脳幹の一部が、大後頭孔を通って脊柱管の内部に陥入してしまう病気です。どの部位が下垂、陥入しているかなどによって、4つの形態に分類されます。


キアリ奇形(脊髄空洞症)は生まれつき?

多くの場合、生まれつき、後頭部の奥の小脳と言う部分が脊髄の方へ下垂していることが原因で生じます。


キアリ奇形(脊髄空洞症)の症状

キアリ奇形(脊髄空洞症)の症状キアリ奇形は、腕から手にかけての痛みやしびれといった不快感で発覚するケースがよく見られます。また、特徴として、腹圧がかかる動作(せき込む、トイレでいきむなど)をすると頭痛(後頭部)が起こるという症状があげられます。子どもが発症した場合、合併症として脊椎側弯症が生じる例が多くあります。そのため、学校の検診で側弯症が見つかり、その詳しい検査の中で、キアリ奇形が発覚するというケースも珍しくありません。
また、主に知覚鈍麻や筋力低下といった神経症状が生じることもあります。こういった症状は数年から十数年という長い時間をかけてゆっくりと進行しますが、痛みや温度に対する感覚には、発症初期から障害が出ます。この症状は火傷や怪我が多くなるという形であらわれ、進行すると多くの場合は腕から手にかけての筋力が下がり、筋肉の萎縮も起こることになります。さらに病状が進むと、ボタンを留める、箸を使う、文字を書くなどの動きができなくなったり、上肢に強いしびれや痛みが出たり、歩行障害が出たりして、日常生活に支障をきたします。また、自律神経の症状を伴うケースもよく見られ、その場合は発汗障害や排尿障害などが生じます。
小脳扁桃の下垂が強い場合、脳幹や小脳の症状(めまい、誤嚥、嗄声・小脳失調・オーディンの呪いという夜間無呼吸など)が起こることがあり、この症状も徐々に進行していきます。


キアリ奇形(脊髄空洞症)の検査

キアリ奇形の診断をくだすためには、頭部から頸椎にかけてのMRI検査が特に重要です。このMRI検査で脊柱管内の脊髄の様子や、大後頭孔の近くにある小脳扁桃の下垂の状態を詳細に確認します。また、この際、水頭症による脳室の拡大が無いかどうかのチェックも行います。延髄の障害の可能性がある場合、口の奥やのどの機能に影響が出ることがあります。それらが疑われる症状が見られる際は、耳鼻咽頭科の精密検査や睡眠時ポリグラフ検査といった検査を実施することもあります。当院では、「しびれ外来」の先生方がこの病気の専門家となりますので、まずは受診してください。


キアリ奇形(脊髄空洞症)の治療

キアリ奇形を根本的に治療するためには、大後頭孔減圧手術(FMD)と呼ばれる手術を行う必要があります。この方法では、大後頭孔の後縁にあたる後頭部の骨を削って大後頭孔を後ろに拡げます。場合によっては硬膜(脳保護膜)を薄くして膨らませる、切開して人工硬膜や筋膜を使用したパッチを縫い付けて拡張させるといった方法をとることもある他、小脳扁桃の一部を焼いて縮めるケースもあります。こういった手術を行うことで大後頭孔内部の延髄や脊髄の圧迫が軽減され、髄液の流れが改善します。脊髄空洞症が合併しているケースでも、多くの場合はこの手術によって空洞は自然に縮小します。以降も空洞が縮小せず続く場合は、空洞症の治療のための手術を改めて行うこともあります。
手術以外にも薬の服用や、マッサージや温熱治療といった理学療法も存在しますが、それらは対症療法であり根本的な治療には繋がらないため、注意が必要です。