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物が二重に見える(複視)の原因

複視とは

複視(両眼性複視)とは、ものが二重に見えることです。片目だけでものを見たときに、二重に見える場合は複視ではなく、乱視などの眼科的な疾患が考えられます。


複視の原因

複視の原因は、外眼筋の異常や、外眼筋を動かす指令を出す神経の異常であるとされています。目の動きを司る神経は3種類あり、「動眼神経」と「外転神経」、「滑車神経」があり、各神経に応じて動かす外眼筋が決まっているため、目の動きを見るとどの神経が障害されているかがわかります。動眼神経とは、眼球の多方向の運動に関与する神経であり、動眼神経が麻痺すると、障害を受けた側の眼球が、上下、内側を向くことができなくなります。また、動眼神経はまぶたの動きや瞳孔の大きさの調整にも関わっているため、動眼神経麻痺が起こると、眼瞼下垂や羞明が起こります。外転神経とは、眼球を外側に向ける運動に関与する神経で、外転神経が麻痺すると、障害を受けた側の眼球が外側を向くことができなくなります。滑車神経とは、眼球を内下方に動かす運動に関与する神経で、滑車神経が麻痺すると下側を向いたときに複視が起こります。また、頭を麻痺した側と反対に向けると複視が修正できるという特徴があります。滑車神経が単独で障害を受けることはあまり多くないとされています。


複視を起こす疾患

複視を起こす疾患で、主に考えられる疾患は、脳腫瘍や眼窩内腫瘍、頭部外傷、脳血管障害(脳幹の脳梗塞、動脈瘤、海綿静脈洞部の血管異常)、海綿静脈洞の炎症、多発性硬化症、ギランバレー症候群(フィッシャー症候群を含む)などがあります。また、脳以外に原因がある疾患としては、重症筋無力症や甲状腺眼症、糖尿病などがあります。

脳動脈瘤

脳動脈瘤のうち、複視を伴いやすいものは、「内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤」と「脳底動脈-上小脳動脈分岐部動脈瘤」です。こうした部位では、近くに動眼神経が走っているため、動脈瘤が増大すると、動眼神経が圧迫され、複視が起こります。脳動脈瘤が原因で起こる複視は、動脈瘤が急激に増大している可能性があり、破裂の危険性があると考えられるため、準緊急的な治療の対象とされています。

脳幹の脳梗塞や多発性硬化症

脳幹の脳梗塞や多発性硬化症によって複視が起こることがあります。脳幹には、内側縦束など眼球運動にかかわる部分があり、それらに関係するような病変が起こると、複視を生じます。内側縦束の障害によって起こる複視の症状は、障害を受けた神経の違いによって起こる眼球運動障害の症状とはやや異なります(内側縦束症候群、one-and-a-half症候群など)。

脳腫瘍

脳腫瘍が下垂体やトルコ鞍、斜台、小脳橋角部に発生すると、複視を起こすことがあります。これらの部位の近くには、動眼神経や外転神経、滑車神経が走っているため、脳腫瘍にこれらの神経が巻き込まれることで複視が起こります。

海綿静脈洞の障害

海綿静脈洞とは、内頸動脈が頭蓋骨に入る手前にある、脳からの静脈が集まっている部分です。海綿静脈洞の内頸動脈が破れると、動脈血が直接静脈血へと流れ込み、様々な症状が起こります(内頸動脈海綿静脈洞瘻)。動眼神経・外転神経・滑車神経は海綿静脈洞の内部を走っているため、内頸動脈海綿静脈洞瘻が起こると、頭痛や複視、眼球の充血、拍動性の突出、耳鳴りなどが起こります。また、内頸動脈海綿静脈洞瘻は脳梗塞や頭蓋内出血の原因にもなります。

目の奥の腫瘍

眼球の裏に腫瘍ができると、腫瘍により眼球の位置がズレたり、外眼筋の動きが制限されるため、複視を起こすことがあります(眼窩内腫瘍)。