片頭痛治療の新時代~エムガルティからはじまる未来~

日本イーライリリー株式会社主催 Yokohama Migraine Clinical Conferenceがありました。子安脳神経外科クリニック 院長 子安英樹先生 座長のもと、品川ストリングスクリニック 理事長/院長 山王直子先生より、「片頭痛の新時代~エムガルティから始まる未来~」と題して、ご講演をいただきました。日暮はDiscussion facilitatorのお役をいただき、Discussantとして、のげ内科・脳神経内科クリニック 院長 渡邊耕介先生、大倉山脳神経外科クリニック 院長 矢崎弘人先生、横浜市立大学脳神経外科 大島聡人先生(当院頭痛外来代診)にご参加いただきました。野毛の渡邊先生とは脳波検査でもよく地域連携させていだいております。

山王先生は横浜市立大学卒業の同門でもありますが、長く日本医科大学脳神経外科で下垂体外科のエキスパート、また開業してからは頭痛診療のエキスパートとして日本の頭痛診療を牽引するお一人です。何度かWEB開催ではご一緒させていただいたことがありますが、直接お会いすることができ、また目の前でご講演を拝聴できたことはありがたいことです。ゆっくり穏やかな口調で講演され、勉強もさることながら癒されました。

山王先生ご講演:片頭痛の影響による日本の経済損失は3600億円~2兆3000億円と報告により幅はありますが、命にかかわりませんが個々人の収入を大きく低下せしめる病気です。発作時は当然、学業・仕事を休むもしくは効率低下を引き起こすことに加え、発作間欠期にも予期不安や生活・仕事を制限する要因を引き起こします。現在片頭痛もちのひとで、月数回程度であれば市販薬セルフケアでOKでしょう。しかし、ストレス・人問題・生理・天候などにより片頭痛頻度が増悪してしまうと、生活支障は大きくなり、頭痛に配慮しながら/我慢しながら日々繰り返すことになります。反復性片頭痛EMが慢性化する確率は年間3%ですが、頭痛外来にはそのような方々が訪れます。「まずは片頭痛を疑え」といわれますが、両側肩こりを強調されると慣れないと緊張型頭痛と誤診してしまうことがあります。話は変わりますが、山王先生のクリニックでは、CGRP薬1000人をこえる処方があり、日暮の知る範囲ではおそらく日本一であると思いますし、それだけCGRPを使わない頭痛患者も多く抱えておられると思われ、その熱意に感銘をうけました。

Discussionでは、「頭痛難民をたすけよう!」というテーマで行いました(リリー側の設定です)。頭痛難民:市販薬の服薬回数が月10回を超え+医師にかかるも同様の痛み止めを出され+予防薬の縁がなく+MRIで異常なし=我慢するしかない人生のburdenと諦めている方々 と日暮私見で定義します。

①「片頭痛によるADL障害をどのように確認していますか?」渡邊先生:問診をしっかりして、生活支障の度合いやプレゼンティーズム(仕事中頭痛発作にて障害される作業効率)を評価する。矢崎先生:片頭痛にともなう随伴症状の支障度(感覚過敏・嘔気・気力減退・めまいなど)に注目して問診する。大島先生:支障度評価ツールHIT6やダイアリーにて客観的に患者と状態を供覧する。子安先生:CGRP製剤が効かなくなってきたと考える患者に関して、同時期に気候やストレス因子が実はあって足を引っ張っているのではないかと確認する。

②「患者さんにどのようにエムガルティ開始を提案していますか?」渡邊先生:あらかじめ「しゃべる絵本」など資材をもちかえっていただき、コスパなどについて検討していただき、患者主導で開始を決めてもらう。矢崎先生:片頭痛の方にはあらかじめ「しゃべる絵本」を提示しておき、急激に増悪した場合に迷いなくエムガルティ注射を申し出できる準備をしておく。大島先生:「EBMの大島」と言われる大島先生ゆえに、客観視データを根拠にスタートする(HIT6やダイアリーからわかる頭痛頻度・重症度)。子安先生:まずは従来予防薬をトライするがうまくいかない場合はエムガルティが選択肢になるようあらかじめ「しゃべる絵本」などで情報収集をすすめている。山王先生クロージング:「しゃべる絵本」をあらかじめ提示して、患者主導で選んでもらうことが重要。ストリングスクリニックは頭痛患者が多く、待合などで患者さん同士で体験を共有したりしている。

※しゃべる絵本は、各医院でもらえます